マーケティング | お客さんには、「唐揚げ弁当」を勧めましょう

小さくても儲かるお店や会社がやってるコト




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「店長のオススメ!」が多すぎる弁当屋は失敗する

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マーケティング活動を始めるにあたっては、「①何を、②誰に、③どうやって」の順で考えるため、「①何を」がすべての活動の起点、出発点になります。そして「何を」が、「顧客が求めているもの」「顧客の期待を超えているもの」なのかどうか、しっかりと考えてみるのが大切です。

不振な会社やお店の大半は、顧客価値が低かったり、ニーズが明確でない商品やサービスを売ろうとしています。そして、「何を」が原因であることを突き詰めずに、新規顧客や新規事業の開拓、さらに売り方ばかり考えて、むしろ傷口を広げていきます。

前回の記事内で、女性客に来てもらおうと、カフェ風に改装して、結局はつぶれてしまった焼き鳥屋の話を書きました。これ、なぜつぶれたか分かりますか?答えは、肝心の焼き鳥の味が美味しくなかったからです。焼き鳥が美味しくない焼き鳥屋が顧客に選ばれないのは当たり前です。

一方で、顧客目線で考えてみると、良い商品を生産したり、供給したりするだけでは十分ではありません。今は、商品や情報が世の中に氾濫しすぎていて、お客さんは何を買ったらいいのかわからない状態にあります。ですから、自分が本当に売りたいもの、お客さんに本当の価値を提供できるもの、それを明確にして、お客さんにしっかりと伝える。それが大切です。

まずは頭の体操をしましょう。たとえば、お弁当屋さんに行ったとします。店内のディスプレイには、ハンバーグ弁当、チキン竜田弁当、のり弁当、ビーフカレー、ロースとんかつ弁当・・・と、何種類ものお弁当がそれぞれ賑やかに、等間隔で並べてあります。こういうお店、どうでしょう?

もちろんメニューが多いこと自体は悪いわけではありません。街のお惣菜屋さんなど、提供する品数が多いこと自体が「売り」になっているお店は数多くあります。しかし人間は7つ以上の選択肢があると途端に選べなくなると言われます。食事を提供するお弁当屋さんが、多くのメニューをメリハリなく、ずらっと並べて提示すると、お客さんは何を選んだらいいのかわからなくなり、混乱してしまいます。

「自分は、何を食べればいいのだろう?」

ですから、お店としては、「うちのイチオシは唐揚げ弁当です。一日○○○個も売れる一番のオススメです」と、自分たちが最も売りたいもの、お客さんにぜひ食べてもらいたいものを前面に出しておきます。すると、お客さんの目は唐揚げ弁当にフォーカスされ、選ばれる確立が高くなります。

お店に入る前から、「今日はハンバーグ弁当だな」と思っていたお客さんも、「イチオシで毎日○○○個も売れているメニューか、それじゃ次は唐揚げ弁当を買ってみよう」と思って、次の来店につながる可能性も高まります。なぜそのお店で食べるのか、どうしてそのお店で買うのか、その理由をお客さんにつくって上げることが大事なのです。

なぜそのお店にいくのか。商品以外にも、駅からの距離やお店の雰囲気、店員の応対など、お客さんに選ばれる理由はさまざまあると思います。けれども、やはり自信を持って勧められる、他店には負けない商品があること、それが重要です。美味しい商品、安心して食べられる商品は、それ以前の大前提です。商品を選んでもらう理由がはっきりしてさえいれば、お客さんに意識的、自覚的に選んでもらえるお店になるのです。

 

人は商品の「機能」ではなく、その商品を買うこと(使うこと)で得られる「価値」にお金を払う

では、「何を」のそもそもについて、もう少し考えて見ましょう。

商品やサービスには、すべて「機能」と「価値」の2つの側面があります。機能とは、性能やスペックと言い換えられるもので、商品そのものが持つ特性や役割をあらわすものです。一方、価値とは、その商品を持つことで得られる満足感や、使ったときに感じる高揚感、さらには使用することで得られる効用といった、目には見えないことです。これは、楽しいこと、気持ちいいこと、役に立つことなどという側面から考えることができます。

たとえば、スマートフォンの大きさを機能と価値で考えてみると、「縦12センチ、横6センチ、厚さ8ミリ」のように、仕様書に記載されているものが機能です。それに対して、「遠くにいる友達とコミュニケーションを取ることができる」「世界中のウェブサイトから商品を購入できる」というと、これは価値になります。そして、ここからが大切です。お客さんが商品を選ぶとき、最初に注目するのは、ほぼ間違いなく機能ではなく価値です。というよりも、極端な言い方をすれば、お客さんにとって機能なんて実はどうでもいい。自らが価値を実感できなければ、お金を払ってくれない、ということになります。しかも、その価値は、機能から得られる直接的な効用だけではありません。

たとえば、2つのメーカーから販売されている2種類のスマホがあったとします。機械的、ソフト的な機能ではA社の商品が勝っていたとしても、スペックでは劣るB社の商品がよく売れる、という事態は、実際にもあります。

たとえばB社のスマホに、「それを持っているとクールである」「それを使っている人にクリエイターが多い」などのイメージが付与されている場合、センスが良いと思われたいお客さんは、B社商品を買い、使うことに価値を見いだすわけです。機能ばかりを追求していた日本のメーカー各社が、iPhoneという一商品に市場シェアを一気に奪われてしまったのが良い例でしょう。

 

唐揚げ弁当の価値は、味とボリュームと話題性

ですから、お客さんが買ったとき、使ったとき、食べたとき、飲んだとき、触れたときに、その価値が実感できる商品やサービス、そういうものを提供しなければなりません。つまり、仕様書やメニューには載っていない、その商品の持つ目に見えない価値をはっきりと明確にして伝えられなければ売れません。それが「何を」を考えるうえで、もっとも重要なポイントです。

ところが「何を」を考える際に、多くの会社は「ハイスペックにすれば、当然顧客に喜ばれるだろう」という発想をして商品を開発し、失敗します。

少し前に、日本の製品が世界の顧客の求める価値を超えて高機能化し、グローバル市場で苦戦を強いられていることが話題になりました。いわゆる「ガラパゴス化現象」です。また、先ほどのスマホの例をお弁当屋さんに当てはめると、店長イチオシの唐揚げ弁当を注文するお客さんは、「満腹感を得る、美味しいと思う」という、主に機能からもたされる効用を超え、「一日○○○個も売れる一品を食べてみる」こと自体に価値を見出します。

少し前に、「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」など、リーズナブルな価格で一流の料理人が、高級素材を用いて料理を供するお店が話題になりました。これなどは、「美味しいものを提供する」という基本は押さえているものの(この基本は絶対にはずしてはいけません)、ブームになってからは、「あの話題のお店で食べた」こと自体が、お客さんにとっての価値になっていると見ることもできます。ですから、私たちが商品やサービスを提供する際には、それによってお客さんにどんな価値を提供できるのか、具体的、かつクリアに認識し、それを知らしめないといけないのです。

 

鉄道会社は、お客さんを移動させるのが仕事

かつてハーバード大学のビジネススクールにセオドア・レビット教授というマーケティングの研究者がいました。レビットは1960年に「ハーバード・ビジネス・レビュー」で、「マーケティング・マイオピア(Marketing Myopia)」、いわゆる「近視眼的マーケティング」という論文を発表しました。

ここでレビット教授は、鉄道を例に、自動車が普及し、鉄道会社が苦境に陥ったのは、自らを「近視眼的」に、鉄道を運行する会社として認識し、顧客にとっての価値、「移動すること」を提供する会社であることが理解できなかったからだ、と説明しています。レビット教授の議論は、鉄道サービスという商品でなく、鉄道という運送手段がもたらす効用に目を向けるべきと主張した意味で、非常に画期的でした。

これまで商品やサービスを通じて顧客に提供するには、機能と価値という側面があると説明してきましたが、もちろんそれぞれ、完全に独立したものではありません。わかりやすく言うと、機能的な面から顧客にもたらす「価値」もあるわけです。

たとえば、お弁当であれば、油何グラム、塩分何グラム的な機能面から、人体の維持や活力源として必要な栄養素を顧客に価値として提供しています。そこで、価値にも「機能的な価値」があると理解できます。ここから、少しややこしい話になってしまいますが、大切な部分ですので、ちょっと頑張っておつきあいください。

一方で、先にも説明したように、商品やサービスを買ったり、使ったりすると、自分の気分がよくなる「情緒的な価値」があって、さらに、世の中が進んでいくと、環境にやさしいといった「社会的な価値」をもたらすようになった、という考え方も現れます。近い話はマーケティングの大家フィリップ・コトラーというアメリカの研究者が2010年に述べています。つまり、「価値」と言っても、とらえ方によって、さまざまな見方があるわけです。

 

IKEA(イケア)が売っているのは「家具」ではなく「ライフスタイル」

さて、話を戻します。商品の機能より価値に重点を置き、その価値を顧客が実感できる売り場づくりをして、好業績を上げているのがIKEA(イケア)です。イケアは、スウェーデン発祥の世界最大の家具販売店。日本でも大変人気が高く、私も大好きで、ホームページを見たり、家でカタログを眺めたりもします。なぜ好きなのか?それは「ルームセット」を見るのが楽しいからです。

ルームセットとは、イケアの家具や雑貨をコーディネートしたテーマ別のモデルルームのことで、「3LDK、68平方メートル」「2LDK、54平方メートル」など、実寸のリアルな部屋を作って家具が配置されています。そこで使われる家具や雑貨は、その部屋に住む人の家族構成や職業、趣味や価値観などを細かくイメージしたうえで、コーディネートされています。

ルームセットでは、実際に家具に触れることができますし、ソファやベッドに座ることもできます。そこでの実際の暮らしが思い描けます。日本にある多くの家具店は、テーブルコーナー、ベッドコーナー、収納コーナーと、家具をカテゴリーごとに分けて展示してあるのが普通です。家具店ですから当然なのですが、こういうお店は「家具」を売っているわけです。

一方で、イケアは、単に家具や雑誌を売ってはいません。ルームセットで顧客に実際の暮らしをイメージしてもらうことで、「くつろぎの空間」「心地よい暮らし」、ひいては「ライフスタイル」そのものを売っているのです。家具という機能ではなく、家具を使ったときの心地よさや満足感といった価値を売っているわけです。

お客さんには、「唐揚げ弁当」を勧めましょう

 

「価格」で勝負をしてはいけない

まずは、お客さんにどのような価値が提供できるのかを考える、商品やサービスが持つ価値がどういうものかを改めて見つける、見いだす。そして次に、その価値をさらに高める。磨き上げる。この一覧のプロセスを突き詰めるためには、どうしたらいいのかを考えていく必要があります。

たとえば、ある街のラーメン屋さんが、自分の店にしか提供できない価値とは何だろうか、と考えたとします。大切なのは、「お客さんに喜んでもらうにはどうしたらいいのか」と考えることです。スープやチャーシューを何日も煮込んだラーメンを出す、本当のラーメン好きが集まるお店だったら、お客さんのために、月に一度、他では食べられない、たとえば、ふかひれラーメンとかツバメの巣ラーメンとか、珍しいメニューを出す日を設けてみる。

あるいは、「楽しい気分で食べてもらう」に重きを置くのだったら、元気はつらつとした店員を採用しようとか、音楽は明るめのサンバにしようとか、お店でお客さんが食べたときの心地よさについて、とことん考える。

要するに、自分の「強み」をしっかり把握して、お客さんに喜んでもらえる価値になるまで、その強みを磨き上げていくわけです。こういうことを考えないで漫然と商売をしていたら、とどのつまりは価格競争に陥ってしまいます。何の特色もないラーメン屋が数件並んでいて、どこで食べても、味も雰囲気も変わらないのであれば、人は1,000円のラーメンよりも800円のラーメンを選びます。

提供する価値で差異化できないと、「安ければ安ほどいい」という価値観を持つお客さんしか集められなくなり、値引き合戦をするはめになってしまうのです。だから、ユニークな「価値」、つまり「他社などのライバルと圧倒的に違う」ことが大切になります。この、「自社のみが持つ独特の強み」をマーケティング用語で、USP(Unique Selling Proposition)と言います。重要なのは「ユニーク」であるということです。

 

お酒造りの背景にあるストーリーが、さらに味を美味しくする

和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて、日本酒には追い風が吹いているように見えます。ですが、実は、国内消費は大変厳しい状況にあります。若者のアルコール離れが進んでいて、今後も急激に国内の消費が回復するとは考えにくいでしょう。ですから、USPを打ち出して、顧客に提案していくことが必要になります。

ここにある造り酒屋があります。明治42年創業の、100年以上続く酒蔵です。ここの最大の強みは、「日本の棚田百選」にも認定されている棚田でとれたお米から日本酒を造っているということです。他社がマネしたくても、そう簡単にはできない圧倒的な強みです。こういう独自の強みが何もなく、「このお酒は、日本酒度がこれくらいで、すっきりとした辛口です」とか「うちは、純米酒しか造りません」といった「機能」、かつ他がマネしやすい部分をプッシュしても、ユニークな強みになりません。

けれども、「創業100年以上の造り酒屋のもので、原料は、日本の棚田百選にも選ばれている棚田でつくられたお米なんですよ」と伝えて、その美しい景観の写真を見ながら飲んだら、美味しさがまったく違うはずです。お酒の背景にあるストーリーが、さらに美味しく感じられます。

また、売り方にも工夫をしています。お得意様向けの頒布会では、大吟醸や純米酒、濁り酒など、さまざまな種類をセットにして、さらに棚田のお米も一緒に届けるのです。お米は2合か3合程度の少量ですが、これによって、お酒のストーリーが生まれ、顧客の心をつかむブランドになっていきます。

同じように、最近の酒蔵には、「自社契約の田んぼでつくった有機・無農薬の酒米を原料にしています」とか、「社長自身が杜氏(製造責任者)を務め、伝統の製法、麹で酒を醸しています」など、ユニークなストーリーを織り込んで日本酒を製造するところが目立つようになりました。このストーリーがあるかないか、それがブランドを形づくるうえでとても重要なポイントになります。

 

ブルー・オーシャンはどこにある?

独自の強みと言っても、今すでにある市場で、他社との違いをつくり出すことだけに固執していては、この先長く成長していくことは難しいかもしれません。もし、そこが多くの競合がひしめいていて、激しい競争が繰り広げられている市場だったら、そこから抜け出し、新たな価値を生み出すことで、新しい市場を切り開いていく。そういう考え方もあるはずです。

経営戦略のひとつに、ブルー・オーシャン戦略というものがあります。これは、フランスの欧州経営大学院(INSEAD)教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュが著した『ブルー・オーシャン戦略』という本で提唱された戦略論です。その本では、多くの競合が参入し、限られたパイの奪い合いをして血みどろの価格競争に陥っている市場を「赤い血の海=レッド・オーシャン」と呼びます。

逆に、競合がおらず、競争がまだ存在しない未開拓の市場を「青く澄んだ海=ブルー・オーシャン」と名づけています。既存の市場で競合と戦っているだけでは、企業は成長し続けることができない。利益ある力強い成長を実現するには、新しい市場、新たなカテゴリーを創り出すことが必要だ、というのが、この戦略のポイントです。

競合との値引き合戦で消耗するのは困る。だから、ブルー・オーシャンを目指したい。このとき、多くの場合、レッド・オーシャンから遠く離れたところにブルー・オーシャンを探そうと考えてしまいがちです。しかし、なぜその市場が赤い海になっているのか。そこに多くの需要があるからです。需要があるから、多くの競合がひしめき血を流し、赤くなっているわけです。

仮にそこから遠いところに青い海を開拓しようとした場合、需要をゼロから掘り起こさなければなりません。そこに需要がない恐れもあります。したがって、ブルー・オーシャンは、赤い海から完全に抜け出てしまった場所ではなく、半分赤い海に浸かりつつ、半分外に出ているところを開拓すればいいはずです。需要はあるけれども、これまでとは少し違う市場を目指すのです。

 

新しくないのに、まったく新しいエンターテインメント

『ブルー・オーシャン戦略』の中で最初に取り上げられている事例が、シルク・ドゥ・ソレイユです。あなたも、名前は聞いたことがあるかと思いますが、これは、サーカスの伝統様式をベースに、ダンスやバレエ、ミュージカルなどを合わせたエンターテインメント・ショーです。これまでになかったまったく新しいタイプのライブ・エンターテインメントは、世界中の人々を魅了し続けています。

従来のサーカスでは、ウマやゾウ、ライオンなどの動物ショーや、人間の曲芸などを中心とした演目が行われてきました。メインのターゲット層は子どもたちです。しかし、いまや子どもを対象にする娯楽は、ゲームやアニメ、インターネットなど、多種多様です。サーカス業界は、顧客減少を食い止めることができず、売り上げが落ち込んでいました。加えて、ショーで動物を使うには、購入費用、飼育費用、輸送費用など、莫大なコストがかかります。サーカス業界は、売り上げが落ちる一方でコストがかさむ、負のスパイラルに陥っていったのです。

シルク・ドゥ・ソレイユは、サーカスだけでなく、その周辺のエンターテインメントに目を向け、ダンスやミュージカル、演劇などの要素を取り入れると同時に、動物ショーを一切とりやめました。差別化と低コスト化を実現したわけです。 

チケット価格も、演劇と同水準、サーカスの平均の数倍に設定しました。エンターテインメント界に、新しいカテゴリーをつくれたため、競合もおらず、価格設定が自由にできたのです。それでお、大人の観客を惹きつけることに成功し、サーカスに興味のなかった新たな顧客層を取り込むことができました。サーカスもバレエも演劇も、新しいものではありません。シルク・ドゥ・ソレイユは、それらを組み合わせ、まったく新しいカテゴリーを生み出したのです。 

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いちご大福という新カテゴリー

シルク・ドゥ・ソレイユは、世界を舞台に活躍するエンターテインメント集団ですから、私たちがそのままマネすることは難しいですが(当たり前ですね)、視点を変えると、同じ構造を持つ事例は、私たちの周りの意外と身近なところにもあるものです。そのひとつに「いちご大福」があります。いちご大福は、「いちご」と「大福」というすでに世の中にあるものを組み合わせた商品です。

近所に大福を売っている和菓子屋さんがたくさんあって、値引き合戦が行われていたとします。そのレッド・オーシャンから抜け出すために新しい市場を開拓しなければ、といって、和菓子屋さんが餃子やラーメンを売り始めても、なかなか成功しないでしょう。それに、餃子やラーメン市場そのものがレッド・オーシャンです。それよりは、自分の店で一番の人気商品は大福だから、何かを組み合わせて新しい商品をつくってみよう、そういう発想のほうがうまくいく確立は高くなります。

日ごろから、ちょっとした空き時間にでも、身の周りの「新結合」を探してみるといいかもしれません。すると、「あ、名古屋の“ひつまぶし”も鰻丼とお茶漬けを組み合わせたものだ」などと気がつくはずです。そして、自分でも、組み合わせを考えてみると、ユニークな商品を考案できるかもしれません。このとき、ちょっとしたコツがあります。組み合わせは、どちらも誰もが知っている一般的なものが良いのです。どちらか一方が一般に知られていないものだと、組み合わせたものも、よくわからないものになってしまいます。

たとえば、中南米にピタヤ(別名:ドラゴンフルーツ)という果物があります。栄養価が非常に高く、健康にいい果実として、最近では日本でもよく知られてるようになりました。けれども、現段階でピタヤを使って「ピタヤ餃子をつくりました。すごく身体にいいですよ!」と売り出したとしても、「何それ?ピタヤ?パタヤ?」と思われてしまうかもしれません。

「いちご」も「大福」も「鰻丼」も「お茶漬け」も、誰もが知っているものです。こういう組み合わせがいいわけです。このように、柔軟な頭の使い方をすれば、誰でも、自分なりのブルー・オーシャンを見つけられるはずです。

 

お客さんは、自分の欲しいものを知らない

今あるものを組み合わせて、新しいもの、新しい価値をつくるにはどうしたらいいのか。それを考えるときに、ひとつ押さえておきたいことがあります。それは、お客さんは自分の欲しいものを知らない、ということです。

iPhoneの生みの親であるスティーブ・ジョブズは、「消費者は自分の欲しいモノなんか知らない」というスタンスを常に貫いていたと言われています。iPhoneは、電話とインターネットとiPodという既存の3つの製品の機能を融合させることで生まれました。すでに世の中にあるものを組み合わせて、スマートフォンという新しいカテゴリーを創り出したわけです。

iPhoneがなかった当時、私たちは、当時iPhoneを知りません。けれども、売り出されて、その商品を知ったら、すぐに欲しいと思ったわけです。ジョブズは、消費者が気づいていない潜在的な欲求を顕在化させ、一歩先を見極めた商品開発を行っていたということです。よく、「新しい商品を開発したいので、お客様にどんなものが欲しいのか、アンケートを取ろうと思っています」と言う方がたまにいますが、新しい商品やサービスを生み出そうという場合には、顧客の声ばかりを聞いてはいけません。それもこれも、顧客は自分の欲しいものを「知らない」からなのです。

 

お客さんの声を聞いても、売れる商品は生まれない

うちの会社にどんなものをつくって欲しいですか・・・。こんなアンケートをしたところで、お客さんは、「その人が今知っているもの」からしか答えられません。人は、知らないものを答えることは出来ないのです。したがって、アンケートからは、誰もが想像できない画期的な商品は生まれない、ということなのです。こう説明すると、「お客様の声を徹底的に聞くことで業績を上げている例がいくつもあるではないか」と、過去の事例をもとに矛盾を感じるでしょう。もちろん、今ある商品やサービスを改善し、さらなる向上を目指すには、お客さんの声を徹底的に聞く必要があります。

マーケティングにおいて、顧客の声を活かして従来の商品を改良していくことを「持続的イノベーション」、従来の商品の価値を破壊するような、まったく新しい価値を生み出すことを「破壊的イノベーション」と言います。

たとえば、料理店は「味は美味しいんだけれど、お店が汚いので・・・」「店員の態度が悪いので・・・」といった声は絶対に聞かなければなりません。また、メーカーが出している商品に対して、「機械音が大きすぎる」「バッテリーがすぐに切れる」といったお客さんの意見は参考にすべきでしょう。

このように、持続的イノベーションを考えるときは、顧客の声を聞いて彼らの不満足を解決する必要があります。一方で、破壊的イノベーションを志向するのであれば、顧客の声を聞きすぎてはいけない、ということなのです。そこに答えはありません。「誰がそんなものにお金を払うんだ?」という独りよがりな商品、自己満足な商品は、論外です。

ただし、まだ存在しないお客さんが欲しがるもの、お金を出したくなるものは、開発する側がじっくり頭を使い、想像力と創造力をはたらかせないと生み出せないのです。

 

アンケートの結果は、答えた人の「その日の気分」「その時の状況」によって変わる

そうは言っても、新商品開発の際に顧客アンケートをとっている会社など、街頭でもネット上でも数え切れないほどたくさんあります。大企業がひとつの新商品や新サービスを出す場合は、予算が莫大ですから、できるだけリスクを減らす必要があります。商品開発の段階で、さまざまな仮説を立て、それに対するリサーチを行い、ひとつひとつ検証して課題をつぶしていくために、アンケートが必要だと判断したのならば、それはやるべきでしょう。要は「新商品を開発したいから、とりあえずお客さんに聞いてみよう」と、先に「リサーチありき」という考え方をしてはいけないということです。

たとえば、極端な例ではありますが、近所のお蕎麦屋さんが「うちのお店で増やしてほしいメニューはありますか?」というアンケートをとってみたところ、若い女性を中心に「パンケーキ」という答えが多数寄せられたとします。これを「お客様の要望だから」といって、さまざまなお蕎麦を並べたメニューの最後に、「リコッタチーズパンケーキ」だとか「ココナッツミルクパンケーキ」だとかを加えたとしたら、果たしてこのお蕎麦屋さんの売り上げは伸びるでしょうか?

これが逆ならいいのです。このお蕎麦屋さんが、「今、パンケーキが流行っていますが、もしメニューに加えたら、うちのお店のイメージは壊れますか?」というアンケートをとってみる。

このような、仮説検証のためのアンケートであれば、問題ありません。仮説が正しいか、間違っているかが証明されれば解決策も導き出されるからです。お客さんの声は全て正しい、という意見もあります。なじみのお客さんが、真剣にお店のことを心配してのアドバイスも中にはあるでしょう。しかし、ほとんどのお客さんは、聞かれればその場の思いつきで答えるものです。

また、アンケートをとる対象者にも十分気をつける必要があります。固形カレーの新商品のアンケートを、単純無作為抽出した対象者に行ったとします。その中にあまり料理をしないであろう70歳以上の高齢者が15パーセントいたら、どうでしょうか。その答えを反映させた商品には、かなりブレが出てくるはずです。ブレる原因は対象者の年齢だけではありません。性別や職業、住んでいる地域、価値観、その会社との距離感、さらには質問の仕方などによっても結果に偏りがでる可能性があります。調査方法によって結果が大きく変わってくるので、アンケートを安易に行うべきではありません。行う際は、十分に慎重になる必要があるのです。

 

130円より、500円のコーヒーが美味しい理由

努力してお客さんに選んでもらえる店づくりをしたり、時流をつかんでヒット商品を創り出したりして、ビジネスが順調に伸びてきた場合でも、大企業の参入で競争が激しくなったり、不景気やデフレで値引き合戦に陥ったりと、取り巻く環境が変われば、自分も変わらざるを得ません。けれども、そんなときでもやはり、自社の持つ独自の強みから離れてはいけません。そこからブレると、お客さんを失いかねないのです。

駅前に一軒のコーヒー専門店があったとします。昭和レトロなたたずまいの落ち着いた雰囲気で、店名は仮に「伯剌西爾(ぶらじる)珈琲店」としましょう。イチオシはブルーマウンテンで1杯500円。少々値は張るけれども、味と品質には自信を持っていて、常連さんも多いお店です。そのお店の近所に、全国展開のカフェチェーンが出店してきました。それに対抗して隣のコンビニでもドリップコーヒーを売るようになりました。カフェチェーンは1杯240円、コンビニは1杯130円。当然、伯剌西爾(ぶらじる)珈琲店への客足が伸び悩むようになりました。

さて、集客力を上げるにはどうしたらいいでしょうか?誰もが最初に思い浮かべるのは、値下げです。それが一番手っ取り早い方法で、メニューの価格表を書き換えれば済みます。でも、豆の品質を下げて、500円のブルーマウンテンを250円で提供したらどうでしょうか。常連客は、「500円払ってでも、ゆったりとした雰囲気で本格的なコーヒーが飲みたい」と思っていたはずです。お客さんの立場で考えると、「今まで500円の価値のコーヒーを提供してくれていたのに、250円の価値のものしか提供してくれない店になってしまった」と思われる危険性大です。

これは、他の仕事でも同じです。あるコンサルタントのセミナーの受講料が2時間で2万円だとします。けれども、他のコンサルタントは2時間5,000円。もっと多くの人にお金を稼いでほしいからと、そのコンサルタント(前者)も2時間5,000円にしたら、「彼は、これまで2万円の価値のある情報を与えてくれたのに、5,000円の価値しか与えてくれない人になったのか」と見られるでしょう。

もちろん、価格競争がすべて悪いと言っているわけではありません。オペレーションや仕入れを工夫して、革新的な手法を導入し、原価を下げて品質の高い商品を安く提供するのは、顧客の価値増大につながります。しかし、価格競争に突入すると、大量の仕入れ・生産によって単品のコスト低減が可能で、薄利多売でも利益を確保しやすい大きな資本を持つ大企業が有利になるため、伯剌西爾(ぶらじる)珈琲店の勝ち目が少なくなります。

また人間は、価格によって商品の価値の判断が変わることも一般に知られています。これは「ハロー効果」と言われ、さまざまな実験で証明されています。ハロー効果は、たとえば特徴的なシグナルから価値を判断する人間の特性のことで、有名大学を出ていると人格までいいと思われやすいなど、あてにならないと誰もが知りつつ、つい誰もがはまってしまう心理的な側面です。

これを値段で言うと、たとえば、同じワインについて、片方は安いと言われ、片方は高いと言われて飲んだ場合、多くの人は、高いと言われたワインのほうを「安いワインより美味しい」と感じてしまうのです。もちろん商品にお金を出す際には、「値ごろ感」がとても大切になりますから、価格戦略は非常に難しいのですが、高くすればお客さんが離れる、安くすればお客さんが喜ぶとは一概には言えないことを理解しておく必要があります。

 

人は、商品を買うとき、ロジカル(論理的)には考えていない

そもそも、コンビニやチェーン店のコーヒーを飲みたい人と、伯剌西爾(ぶらじる)珈琲店で飲みたい人とでは、求めているものが違います。

コンビニに行く人は、缶コーヒーより少し美味しいものが欲しい人であり、チェーン店に行く人は、安くて気軽に入れる便利さを求めている人です。同じコーヒーを売るのでも、コンビニやチェーン店と、このお店とでは、同じ格闘技の相撲とボクシングくらいの差があるわけです。

お客さんの要望が違うことを理解せず、安易に品質や価格に競争ポイントを転嫁して、自分の強みから離れてしまうのは非常に危険です。やはり、まずやるべきことは、自らの店は、チェーン店やコンビニとどこが違うのかを明確に打ち出すことです。豆は鮮度が大事だからオーダーが入ってから挽いていますとか、ペーパーではなくネルドリップで淹れていますとか、値段は高くてもそれだけ力を入れている、自分の店のコーヒーの違いをはっきりとわかるように伝えるのです。

それから、顧客目線で考えることです。コーヒー専門店だからといって、「コーヒーを出すだけの店」と自ら定義してはいけないのです。お客さんに喜んでもらうために何ができるのか、どんな価値を提供できるのかをとことん考える。高級コーヒーを提供する店であれば、ふかふかのソファにゆっくり座れますとか、アナログのレコードでクラシック音楽を流していますとか、クラシック音楽雑誌のバックナンバーがすべて揃っていますとか、いろいろ考えてみます。

その結果、「本格コーヒーと一緒に、クラシック音楽でリラックスできる時間と空間を提供する店」というのが、自分の店の強みだとわかったら、それをはっきりとお客さんに伝えるのです。お客さんは、商品を選ぶとき、ロジカル(論理的)には考えていません。

「みんなが行っているからスタバにしよう!」「CMでやっていたからコンビニへ行こう!」わかりやすいほうを選んでしまうものです。ですから、お客さんがなぜこのお店に来るのか、その理由を明示して、わかりやすく伝えるのです。自分の強み、自分の信条から外れたことはしないことです。自分がブレてしまうと、それまでひいきにしてくれた大事なお客さんも、混乱してしまうからです。

 

二兎を追う者は一兎をも得ず

ブレるというのは、価格に限ったことではありません。伯剌西爾(ぶらじる)珈琲店が、売り上げ不振を解消しようとして、「世の中ではソイラテが流行っているからうちもやろう」とメニューに加えたとします。さらに、「フラペチーノもいいな」「スムージーもやろう」と、とにかく商品を次々に増やして、「うちは何でもあります」というお店になってしまったらどうでしょうか。

以前のコーヒー専門店の強みが弱まってしまい、お客さんが何を求めてお店に行くのかが、わからなくなってしまいます。たとえば、コンサルタントをやっている人のところには、お客さんは「新規事業の開発をしてもらいたい」「売り上げを伸ばす方法を考えてもらいたい」ということを求めていらっしゃいます。

そこで、そのコンサルタントがたとえば、「税理士の資格も取ったので、税務相談にものります」とか「社会保険労務士の資格もあるので、年金についてもお答えできます」と、有料でこのようなサービスを提供したらどうでしょう。お客さんは、税金については税金の専門家に相談したいし、年金は年金のプロに話しを聞きたいはずです。「何でもできます」と言われたら、本業であるマーケティングについても「大丈夫かな」と思うでしょう。

「何でもできます」と言った瞬間に、お客さんは「何もできないんだな」と思います。ビジネスにおいては、「何でも手を出す」を目指すと、むしろ自分の強みが明確にできなくなって、失敗する確立が高まります。自分の会社の事業領域を「事業ドメイン」と言います。つまり事業ドメインから大きく外れたものに手を出して成功するのは難しいのです。

 

高級ブランドがセカンドラインやカジュアルラインをつくるわけ

では、次のような場合はどうでしょう?チェーン店などの攻勢で、売り上げ不振にあえぐ伯剌西爾(ぶらじる)珈琲店が頭を悩ませているとき、常連客から「ソイラテを低価格で出して欲しい」と言われました。お客さんに100パーセント迎合すると失敗確立が高まるのは、前に説明したとおりですが、同時に、お客さんの声に、ヒントやチャンスがあるというのも一面の真実です。

ソイラテ、しかも低価格なメニューを加えたら、伯剌西爾(ぶらじる)珈琲店の「本格コーヒーでリラックスできる時間と空間を提供する」という強みが薄まる、さらに店の信条から離れる可能性がある、けれども需要はありそうな・・・。

こういう場合、別の店舗としてソイラテを提供する親しみやすいカフェを出店するという手があります。その場合、店名は、「伯剌西爾(ぶらじる)カフェ」などに変えます。そうすれば、本店のブランドイメージがブレません。これをマーケティング用語で、「ブランド・エクステンション(ブランド拡張)」と言います。派生ブランドをつくるということです。すでに確立しているブランド名を利用して、新しいカテゴリーをつくるわけです。

これは、アパレル業界に成功例が多く見られます。たとえば、アルマーニです。メインブランドは「ジョルジオ・アルマーニ」、セカンドラインは「エンポリオ・アルマーニ」、そしてカジュアルラインは「アルマーニ・ジーンズ」です。若者向け低価格商品を最高級のメインブランドである「ジョルジオ・アルマーニ」でやってしまうと、もともとのブランドイメージが損なわれてしまう恐れがあります。それで、別にセカンドラインやカジュアルラインをつくったというわけです。

ブランド・エクステンション(ブランド拡張)は、すでに成功しているブランド名を利用するので、新ブランドをゼロからつくるのに比べて、コストがかからないというメリットもあります。この倍、もとのブランドの高い価値が前提なので、伯剌西爾(ぶらじる)珈琲店が拡張させても成功するかどうかは保証できませんが・・・。

お客さんには、「唐揚げ弁当」を勧めましょう

 

自分が本当に欲しいものを「①何を」に当てはめてみる

最後に、もう一度、なぜ「①何を」を最初に考えなければいかないのかを別の側面から考えたいと思います。

先に、「③どうやって」から考え、「①何を、②誰に」を後回しにすると、いろいろ不具合が起こって、マーケティング的に失敗することが多いと書きました。これをより俯瞰した視点で考えると、「①何を」で一番重視すべきお客さんに提供できる「価値」を軽視すると、顧客から得られる「利得」に目が向きすぎてしまうのです。

よく言われますが、利得が目的となったビジネスは長続きしません。また、みんなが利得を重視しすぎて、「何を」を提供すると、その市場も先々弱っていくかもしれません。ですから、「何を」を考える際には、自分たちは何を提供したいのか、何を提供すれば世の中に価値を与えられるのか、そして、その価値を最大化するには、どうすればいいのかという視点を忘れてはいけないわけです。その大前提を踏まえたうえで、スペックや価格なども含めた製品戦略を練り尽くすことが必要となります。そして、「何を」をしっかり考えたら、その価値を少しでも多くのお客さんに届けるために、「②誰に、③どうやって」の戦略を考えていくのがビジネスの王道と言えます。

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