マーケティング | ミシュラン五ツ星でも覚えられない店名はクチコミしてもらえない!

(90×90)小さくても儲かるお店や会社がやってるコト




Sponsored Link

お客さんはあなたが思っているほど、あなたの会社や商品のことを知らない

★↓↓是非クリックしていただけると記事作成の励みになりますヾ(;´▽`A↓↓★
⇒ 今何位? <人気ブログランキング>
人気ブログランキング

 

 

いい商品も考えられた、ターゲットとなる顧客(お客さん)も設定できた。あとは、商品のユニークな価値を顧客(お客さん)にメッセージとして届けるだけです。では、その戦略はどうでしょう。やっとのことで、私たちはこのステップまで到達しました。つまり、「③どうやって」を考えるのです。ただし、その「どうやって戦略」を考えるとき、頭の片隅に入れておいてもらいたいことがあります。それは・・・、

顧客(お客さん)は私たちが思っているほど、私たちの会社や商品のことを知らない。 

ということです。当然ながら、私たちは自らの商品を常に意識して見ているため、その商品を身近に感じていますし、もちろん機能や価値も熟知しています。そこで、プロモーション戦略を考えるとき、「うちのこの商品には、こういうイメージがあるから・・・」というスタート地点に立とうとする人がいます。

世の中には、何千万、何億という人がいるわけです。基本的に、そのほとんどの人は、「自社の商品を知らない」というスタンスでいたほうがいいでしょう。たとえ一度お店で手に取ったり、ネットで見たことがあったとしても、顧客はすぐに忘れてしまうものです。「折り込みチラシやホームページ、フェイスブックなどで常に情報発信している。これだけやっているのだから、名前くらいは知っているだろう」「この商品は、発売してかなり経っているから、多くの人がその価値を知っているはずだ」

こういう考えは、ただの自己満足、あるいは自意識過剰だと理解しておく必要があります。ですから、「①何を」を考えるうえで、というより、「②誰に」「③どうやって」も含めたマーケティング活動全体に関わることですが、商品を買ってもらうには、まず顧客(お客さん)に認知してもらわなければなりません。認知といっても、その意味は2つあります。

ひとつは、「認知する(recognition)」。これは単純に、知っているかどうか。「マーケティング太郎という人を知っていますか?」と聞かれて、イエスかノーか、ということです。

そして、もうひとつが「想起する(recall)」。これは覚えているか、思い出してもらえるかです。たとえば「日本食と言えば?」と聞かれたときに、「お寿司」と答えてもらえる、そういうことです。

 

「濃いめの缶コーヒー」と言われてどの商品名が浮かびますか?

この「認知」「想起」の違いを具体的な商品で説明すると、こうなります。

ある会社のAさんが、職場の後輩であるBさんに缶コーヒーを買ってきてくれるよう頼む状況を思い浮かべてください。

「Bくん、缶コーヒー買ってきて欲しいんだけど。お願いできる?」「何の缶コーヒーが良いですか?」「『UCCのやつ』知ってる?」「はい、知ってます」「じゃ、それお願い!」これがBさんに「認知」されているということです。

こんな場合はどうでしょう。「Bくん、何か濃いめの缶コーヒーを買ってきて欲しいんだけど」「わかりました。『UCCのやつ』にしましょうか?」「それ、お願い!」これがBさんに「想起」されたということです。

では、認知されている場合と、想起してもらえる場合、どちらがより売れるでしょうか。説明するまでもなく、顧客(お客さん)に想起してもらえる商品のほうが、よく売れます。ですから、商品を供給する側は、最終的には「想起」されることを目指すことになります。しかし、ここまで到達するのは、かなりハードルが高いことですから、まずは顧客(お客さん)に知ってもらう。そしてその次に、思い出してもらう・・・。

自社の商品を「想起」してもらうには、そういうステップが必要なのです。では、この前提を十分に理解してもらったうえで、「③どうやって」について考えていきましょう。

 

自分達がFacebookを始める理由は1つだけ

その商品を必要としている人に、「どうやって」知ってもらうのか、価値を感じてもらうのか、買ってもらうのかという手段には、数え切れないほどの選択肢があります。多くの人は、告知というと広告を想像すると思いますが、最近ではSNSサービスを使うケースも増えていますし、他にも、体験会や試供品配布、街頭イベントなど、数限りない方法があります。

そして、その数限りない方法にも、さらにいろいろな「やり方」があるので、何をすればもっとも効果的なのかを見定めるのは、とても難しいことです。広告ひとつを考えても、テレビ、新聞、雑誌、チラシ、ポスターなどさまざまな媒体があります。このとき、もし「①何を、②誰に」が決まらないまま、やみくもに広告を出したら、その商品を必要としている人が見ていない媒体を使う可能性があります。それでは、そこに費やしたお金も時間も労力もすべてが無駄になってしまいます。先に説明した事例を思い出してください。だから、「③どうやって」から先に考えてはいけないわけです。

ある、Oさんという世界的にも有名なコンサルタントがいます。セミナーや講座の依頼がひっきりなしに入る、凄く人気のある人です。少し前、某テレビ番組の放送中にて、そのビジネス最先端を行くOさん、しかもコミュニケーションを専門にする講師であるのに、Facebook(フェイスブック)をやっていなかったため、なぜやらないのかと番組司会者が質問したところ、Oさんは、「私のお客さんは誰もやっていないから」と即答しました。

その数ヵ月後に、別のテレビ番組内にて、Oさんは、「お客さんが始めたから私も始めてみました」と答えていました。

これが正解ではないでしょうか。Oさんは、自分の顧客(お客さん)が見ていない媒体にかかわることに、労力や時間を費やしても無駄になると考えていたわけです。

商品を売るための基本は「何を」「誰に」「どうやって」の3つのポイントを順番に考える】の中古本屋さんの事例を思い出してください。売れ筋の中心がアイドル雑誌や写真集というお店であれば、主要顧客層はヤング層が中心と推測できます。ですが仮に売れ筋商品が古典や詩歌だった場合であれば、主要顧客層はシニア層が中心と推測ができます。これらの顧客(お客さん)の行動パターンを考えた場合、どんなに熱心にSNSで古典や詩歌の新刊情報を流しても、あまり効果は期待できないかもしれません。「どうやって」を考える際には、その商品を必要としているたちが接しているであろう媒体を選んで、効率よく伝える必要があるというわけです。

 

伝えたいメッセージを一番相手に伝わる「乗り物」に乗せて上げる

では具体的に、あなたの商品を買ってもらいたい人(相手)に認知してもらうために、もっとも多くの人が考える方法、広告やPRなどを用いたコミュニケーションについて考えてみましょう。

広告やPR戦略については、いろいろな理論がありますが、一般の人が覚えても実効性が低いので、ここではかなりざっくり、2つの要素から考えます。ひとつは「表現」、もうひとつは「媒体(メディア)」です。まず「表現」です。これもかなりシンプルに「コピー」「イメージ」からなると理解しておきます。

コピーというのは、つまり、その商品の価値、メッセージを文字、言葉によって表現することです。キャッチコピー(一言で印象づけるキャッチフレーズ)やボディコピー(キャッチだけでは説明できない商品紹介)などがあります。さらに、イメージというのは、動画、写真、デザインなど、やはり商品の価値、メッセージをビジュアルにどう表現してその商品を必要としている人に伝えるかと理解しておいてください。

この「表現」をどういうものにするかは、とても難易度の高い仕事で、正解というものがありません。広告業界では、いわゆる「クリエイティブ」と呼ばれる分野の仕事になります。コピーライターやグラフィック・デザイナーなどプロの力を借りることもありますが、そういった専門家に頼ることなく、自分たちで頭を使って考えることも少なくありません。これらの表現を乗せるのが、媒体(メディア)です。英語では、車や乗り物という意味の「ビーグル(vehicle)」と言ったりもします。

この「表現」と「媒体」、どういう表現をしたいから、この媒体を選ぶ、あるいはこの媒体を選んだから、こういう表現をする、というように、切っても切り離せない関係です。テレビCMと新聞広告では、伝えるべきメッセージの表現も変わりますから、とてもわかりやすいと思います。要は、「大切な顧客(その商品を必要としている人)に心を込めたメッセージを、一番いい乗り物に乗せて届ける」ということを理解する必要があるということです。では、顧客(相手)へのメッセージを乗せる媒体を、どのように選択すればいいのでしょうか。広告の例で考えてみます。

まずは、媒体の種類、特性をしっかり把握するということです。媒体には多くの種類があり、またそれぞれに特徴があるので、その特性に応じて使い分けます。

テレビCMを出す場合は、映像で強いインパクトを与えることができ、また視聴率によっては一気に多くの人にメッセージを届けられますが、その反面、コストが高く、時間も基本的に15秒しかありません。一方、新聞や雑誌などの印刷媒体の広告は、テレビほど広く強いインパクトはないものの、手もとでじっくり見られるので、スペックなどの詳細な情報を伝えることに適しています。さらに大切なのは、それぞれの特性を活かして、媒体を複数組み合わせるということです。

大企業が新商品を出す場合、テレビCMだけをたくさん使って、他の媒体を一切使わないということは、まずあり得ません。テレビCMで認知度を上げ、雑誌広告でイメージを固めて、商品の特長を新聞広告やホームページでしっかりと知ってもらう。そして、その商品を欲しい人が来店したときに、ポスターやポップでメッセージを受け取ってもらう。このように、複数の媒体を組み合わせることで相乗効果を生み出し、最速最短でその商品を欲しい人にメッセージを伝えることが重要です。

 

同じ美容サプリメントでも伝え方は大きく変わる

最速最短で相手(その商品を買ってくれる人)にメッセージを伝える媒体を選ぶ際に、気をつけて欲しいことがあります。それは、中立の立場で選ぶということです。これをマーケティング用語で「メディアニュートラル」と言います。

これは、テレビ、新聞、雑誌といったあらゆるメディアに対する固定観念をいったん捨て、白紙の状態にしてから、最も有効な方法を選ぶという考え方です。では、どうしたら最適な方法を選ぶことができるのでしょうか。それは、その商品を必要としている人の行動を想像してみることです。【住宅展示場では、夫(旦那)に家を売ってはいけない】で書いたペルソナ・マーケティングのように、その商品を必要としている人のライフスタイルを細かく考えてみます。

たとえば、美容サプリメントを例に考えてみましょう。手ごろな値段の商品と、価格が高めの商品とでは、広告を出す(出稿する)媒体が違ってきます。手ごろな商品を必要としている人は、小さな子どもがいるアラサー主婦、節約志向で、お得な生活情報に敏感。ママ友とLINE(ライン)で情報交換するのが楽しみ・・・。

このように想定するのならば、彼女たちがもっともよく接していそうなメディア、テレビCMだったらお昼の情報番組、雑誌広告は『オレンジページ』『レタスクラブ』といった料理雑誌や生活情報誌、またスマートフォンであれば、LINE(ライン)に公式アカウントを設置するといった媒体を選んでいくことで、その商品を必要としている人達への到達率(リーチ)を上げていきます。

ミシュラン五ツ星でも覚えられない店名はクチコミしてもらえない

一方、価格設定が高めの商品の場合は、コスト効率よりも、おしゃれに対する感度が高く、昼間はオフィス街で働く女性などを想定します。この場合、テレビCMなら夜のドラマや、雑誌であれば『CanCan』『25ans』などの女性ファッション誌といった媒体に広告を出すことで、より効率的にその商品を必要としている人たちに伝えることができます。

つまり、同じカテゴリーの商品でも、その商品を必要としている相手が違えば、伝える方法も変わってきますから、「流行のメディアだから」とか、「これまでずっと私が使ってきたから」といった固定観念をいったん捨てて、「その商品を必要としている人たちがよく接するメディアは何だろう」という中立の立場で最適な媒体を選ばなければいけないわけです。さらに、それらを複数組み合わせることで相乗効果を生み出します。

これは、テレビや全国紙などのマス媒体に限った話ではありません。新聞の折り込み広告を思い出せば、マンションや高級車が目立つ新聞、スーパーや家電量販店が目立つ曜日など、地元密着型の広告でもいろいろな違いがあることがわかります。こうしてきめ細かな対応をすれば、その商品を必要としている人に効率よく効果的にメッセージを届けられます。

 

SNSもテレビや雑誌と同じ「メディア」。無料で使えるメディアは上手く活用する

ここ数年、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)といったソーシャルメディアが、マーケティングに大きな影響力を持つようになってきました。そこで、その商品を必要としている人とその商品を提供できる人を繋ぐすべての接点や仕組みをメディアとしてとらえ直し、マーケティングに活かせるように、3つに整理・分類した「トリプルメディア」というモデルが、注目を集めています。トリプルメディアの中身は、次の3つです。

①ペイド(paid)メディア
②オウンド(owned)メディア
③アーンド(earned)メディア 

これらには、それぞれ長所と短所があります。

ペイドメディアとは、「買う」メディアのことです。お金を払って広告枠(宣伝できる場所)を買うもので、テレビCMや新聞、雑誌広告など、従来型のマス広告がこれにあたります。ネット広告もこれに含むとする考え方もあります。長所は、自分が伝えたいタイミングで伝えたいことだけを伝えられる、ということです。影響力が大きいので、短期間で商品やサービスの認知度を上げるのに効果があります。一方で、費用がかさむという短所もあります。さらに、企業から、一方的に発信されるメッセージであることが、消費者からのレスポンスが落ちてきているのでは、と見られる面もありますが、ネット広告などは、その商品を必要としている人との双方向のコミュニケーションが可能になり、新たな可能性も期待されています。

次の「オウンドメディア」とは、自分達で持つ媒体のことです。ホームページやメールマガジンなどのネットを使った媒体だけでなく、ショールームや実店舗なども広く含まれます。これは、自分達で管理・運営するので、コントロールしやすいという点が長所です。媒体を買うわけではないため、運営方法によっては、費用が低くおさえられるというメリットもあります。一方で、媒体の知名度を上げるのにある程度の時間がかかるという面もあります。ホームページを作ったからといって、公開したその日から1日に1万アクセスあるようなことは、ほとんどありません。その存在を知ってもらうのに時間がかかる、という面があります。

3つめの「アーンドメディア」とは、自分達が信頼や評判を得る媒体のことです。Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)といったソーシャルメディア、食べログなどのクチコミサイト、Amazon(アマゾン)や楽天のカスタマーレビューなども含まれます。長所は、第三者がニュートラルな立場で言っていることが大前提なので、一般の人たちに信頼される確立が高いということです。その反面、自分達でコントロールできないという短所もあります。ネガティブな内容のクチコミがインターネット上に拡散してしまう恐れもあります。かといって、「お金を払うから良いレビューを書いてください」といった、いわゆる「やらせ」のクチコミは言うまでもなくアウトです。発覚すれば、大きなダメージを負います。

 

「知る→買ってくれる→また買ってくれる」のサイクルをつくる

では、この3つの媒体を組み合わせて相乗効果を生み出すには、どうしたら良いでしょうか。それぞれの媒体の特性を活かすことを考えます。大きな流れとしては、次のようなサイクルになります。

①ペイドメディアで認知度を上げて、オウンドメディアに呼び込む
②オウンドメディアで、商品への理解を促したり、販売促進を行い、買ってもらう
③買ってくれた人には、DM(ダイレクトメール)やニュースレターを出し、また買ってもらう

つまり、「知る、買ってくれる、また買ってくれる」の3段階のプロセスを仕組み化するわけです。加えて、②の段階で、自分達のHP(ホームページ)、あるいは実店舗(お店)を訪問してくれた人のなるべく多くに、DM(ダイレクトメール)やニュースレターを出せる仕組みをつくれれば、たとえ初めての訪問では買ってくれなかったとしても、次に買ってくれるチャンスを高めることができます。その意味では、ペイドメディアで知ってもらった相手に、いかに自分達のHP(ホームページ)や実店舗(お店)に来てもらうかが大切です。なぜなら、ペイドメディアには、時間的、スペース的な制約があって、なかなか商品の特性を完全に説明することが難しいからです。

テレビCMで、しばしば目にする「続きはWebで」というのは、オウンドメディア(自分達のホームページ)に見てくれた人を呼び込むという点で、とてもうまいやり方でした。さらに、提供している商品やサービスの品質が優れていれば、その商品を買って満足してくれた人が、Facebook(フェイスブック)やカスタマーレビューなどのアーンドメディアにその商品のことを書いてくれたりします。

こうした各媒体の間で好評が広がっていくと、認知度がさらに上がります。最近は、商品を必要としている人も情報感度がたいへん高くなっているので、新しい商品やサービスに対しては、事前に入念な情報収集をすることが多くなっています。だからこそ、商品やサービスの品質、価値は徹底的に上げることが大切なのです。

 

値段が無いバスツアー会社

伝える方法の次に、商品を必要としている人に対してメッセージを伝えるための「表現」について考えていきます。表現を考えるときに大切なのは、徹底的にその商品を必要としている人の目線になることです。どうしても、伝える側は、あれも入れたい、これも入れたいとなるのですが、それはあくまで売り手目線。その商品を必要としている相手は、それほど自分には興味を持ってくれていないと考え、どうすれば響く表現になるのかを工夫します。

つまり、相手が欲しいと思う目には見えない「価値」を明確にわかりやすく、また興味を持ってもらえる形で伝えることが大切というわけです。具体的な事例で紹介しましょう。ここで紹介するのは、仕事の進め方、またメッセージを表現する際に、徹底的なその商品を必要としている相手の目線を実現させて好業績を上げているバスツアー会社です。

同社は、テレビCMが全国で流されているような大きい会社と比べると、規模も知名度も低い、中堅の業者ですが、お客さんの満足度は93パーセント、しかも高リピート率を誇っている会社です。

今、バスツアー業界はとても競争が激しくなっています。インターネット上には、一度に数十社の価格を調べられる「価格比較サイト」が多数存在し、料金を比較できるようになっています。そのため、激しい価格競争が繰り広げられています。多くの会社のホームページでは、安さを前面に押し出した情報がアピールされています。

けれども、このバスツアー会社のホームページのトップには、料金表が載っていません。その代わり、幸せそうに微笑む家族や恋人同士の写真が公開されています。同時に、高品質なサービスを提供することによって、お客さんの満足度が高いという点を強くアピールしています。

価格競争が激しいバスツアー業界では、価格が多少高くなってもいいから、丁寧な仕事、サービスが充実した会社を選んでくれるような人たちは、大切にすべき存在です。また、単価が高くなるツアー、つまり団体客での貸し切りツアーをなるべく多く受けると、売り上げ効率を高めることになります。

この点から考えると、数日かけて日本全国を周る、日本一周バスツアーがもっとも望ましいと言います。利用者は、数日間バスを貸し切って移動するので、多少料金は高くてもいいから、良いサービスを提供してもらいたいと考えるそうです。そこで同社は「良い利用者」から選んでもらうために、徹底的にバスツアーに参加してくれた人達の声を聞きました。

バスツアー業界は、「持続的イノベーション」が重要な業界です。作業が終了したあと、不満足だった点をアンケート用紙に記入してもらい、ドライバーが会社に持ち帰り、翌日の朝礼で全従業員にフィードバックし、すぐに問題を解決するのです。そして、顧客(お客さん)の声を活かして、実際のツアー内容を大幅に改善しました。

長時間座っていても疲れないようにするため、バス全車のイスの素材を変えたり、ガイドが名所を案内するときには地元の人しか知らないお得情報を教えてあげたりと、細部まで気遣いを欠かさず、懇切丁寧なバスツアーを目指しました。その積み重ねで、顧客満足度93パーセントを実現したわけです。そのうえで、ホームページでは高品質な仕事と顧客満足度を訴えることにしました。

この、安さをセールスポイントにしないという戦略は、価格が提示されると、それによって、内容も類推されるという【お客さんには、「唐揚げ弁当」を勧めましょう】でも説明したハロー効果などの面から考えても、高品質を暗黙のうちにアピールすることができ、とても合理的です。

バスツアー会社のホームページは、「いいお客さんは値引きするよりも、いいサービスを求める」という前提に立ち、徹底した顧客目線(お客さんの視点)での表現を志向しているわけです。

 

顧客(お客さん)の価値からかけ離れたもので表現しない

表現の「イメージ」を考えるときに、売り手目線でやってしまいがちな失敗があります。顧客(お客さん)の求めている価値からかけ離れたものを表現してしまうのです。具体例を見ましょう。

ある、美容室を経営している経営者がいます。周りの経営者達は『hotpaper beauty(ホットペッパービューティー)』など、美容系フリーペーパーに広告を載せています。ところが、その広告を見てみると、たいてい、とても美しい外国人の女性モデルを採用しています。しかし、外国人モデルを起用しているお店は、残念ながら、いまひとつ集客につながっていない印象があります。

お店は、顧客(お客さん)が、「このモデルのようにきれいになりたいと思うだろう」と考えて外国人モデルを採用しているのでしょう。けれども、広告を見る潜在顧客は、「今よりもっときれいな自分になりたい」「もっとスリムな自分になりたい」とは思っても、けっして外国人のような見た目になりたいとは望んでいません。だから、この広告では、潜在顧客とお店との距離が縮まらないのです。

この場合、顧客像に近い日本人モデルを使う。あるいは、「私がカットします」といって美容室のオーナー、もしくは看板カリスマ美容師の写真を使う、というイメージ戦略が考えられます。美容室は一対一で、美容師が顧客(お客さん)の髪の毛に直接触れるわけです。実際に来店した際に、どんな人がカットしてくれるのか、その顔が見えれば安心感が生まれます。そうすることで、お店と顧客(お客さん)との距離を縮められるかもしれないわけです。

マーケティング用語には、「ブランド・アソシエイション(連想)」という言葉があります。これは、顧客(お客さん)が、そのブランドの名前を聞いて連想する、すべてのイメージや言葉などを指します。顧客(お客さん)が連想するのは、直接、体験したことに加え、広告などの情報から得られるものも多いのです。

マーケティングでは、このブランド連想が、競争相手に比べて特別なもの、差異化できていることが重要とされています。ですから、競合相手の多くが外国人モデルでイメージをつくっている場合、自社のオーナーや看板カリスマ美容師でイメージをつくれば、そのぶんだけ「特別」な連想につながる可能性も高くなります。同時に、そのカリスマ美容師の名前を聞いて、「安心、親しみやすい」などの言葉が連想されれば、さらに顧客(お客さん)との距離感を縮めることができるでしょう。

 

スケールメリットを活かせる大手と同じ土俵で戦ってはいけない

また、顧客目線(お客さんの目線)でチラシをつくり、表現の工夫をしっかりすることによって成功した事例を見てみましょう。【住宅展示場では、夫(旦那)に家を売ってはいけない】で紹介したレンタルビデオ屋さんのお話です。

こういう場合、絶対にやってはいけないことは、安易に値引きをすることです。レンタルビデオ市場で、もっとも「売る(売り上げを上げる)」のは、TSUTAYAを始めとする「大手」です。大手は、スケールメリットを活かして大量に仕入れ(商品を店頭に並べ)ることで、低価格を実現できます。同時に激しい値引き合戦に陥っています。街の小さなレンタルビデオ屋さんがこの価格競争に巻き込まれたら、勝てるはずがありません。ですから、同じ土俵で戦ってはいけないのです。では、どうするか。どんなに小さなことでもいいので、小さいところから独自の強みを見つけていくしかありません。

まず店長と顧客目線(お客さんの目線)で自分達の強みを考えてみました。「大手」が持っていない、目には見えない価値です。すると、「顧客(お客さん)一人ひとりの好みの映画を知っている」「他では置いていないようなマニアックなタイトルも借りられる」といった価値が挙げられました。さらに店長は、「その映画に出演している俳優が好きな人は、その俳優が好きなものも知りたがっている」ということにも、気づいたのです。

私たちは、自社(自分たち)の商品を知りすぎているので、顧客(お客さん)が抱く素朴な疑問を見逃します。だから、この映画に出ている俳優は普段はどんな生活を送っているんだろうと思っている人の存在に気がつきません。けれども、店長は日ごろ顧客(お客さん)と接する中で、そのことに気づき、それを価値に結びつけることができました。これは、日ごろ顧客(お客さん)と真摯に向き合っているからこそのひらめきです。

 

お客さんは「こだわりの食材」ではなく「秋田の比内鶏」を食べたい

もう少し「表現」について考えてみましょう。

商品、特に食品などの場合、「こだわりの食材」「こだわりの製法」といったものを前面に押し出した広告を多く見かけます。そもそも「こだわる」という日本語の意味がどうかは別にして、顧客(お客さん)が、その「こだわり」を知ることで、さらにその美味しさが実感できるわけですから、そういう広告もありだと思います。

ただし、これだけ世の中に「こだわり」があふれていると、それが、ほかに比べてどれほど優れているのかを、きちんと伝えられなければ意味がありません。ですから、こだわりの食材であれば、顧客(お客さん)に「固有名詞」で連想、認識してもらえるような表現が必要になります。さらに、固有名詞から連想してもらえるイメージを、「美味しい、安全、ユニーク」などポジティブなものとして認識されるものに設定できれば、より効果は上がります。

わかりやすい事例では、「前沢牛A5ランクの肉だけでつくったハンバーグ」や、「天然比内地鶏がたっぷり入ったきりたんぽ鍋」、「日本海の天然地魚をふんだんに使った高級海鮮丼」と聞けば、多くの人は食欲を刺激されるはずです。さらに、そこからもう一歩進めて考えるには、【お客さんには、「唐揚げ弁当」を勧めましょう】でも説明した「機能」「価値」の議論で理解してもらうのがいいと思います。

かつて、企業が商品などを宣伝、広報する時は、「これは、どんなものなのか?」という機能面が重視されていました。これは、いわば「こだわりの素材、こだわりの手法」と同じく売り手目線のメッセージです。ところが、マーケティングの知見が広がっている現在においては、顧客目線(お客さんの目線)のメッセージである、「この商品を買うことによって、どんな良いことがあるのか」を表現するケースがたいへん多くなっているのです。

それはなぜか。顧客(お客さん)は、商品の「こだわり」という「機能」よりも、その商品を使ったときの「価値」に重きを置くからです。ですから、前沢牛、比内地鶏、日本海の天然地魚など、すでにブランドが確立されていて、それがもたらす「価値」を多くの人が共有していれば、その表現は意味があるものになります。

一方で、「2014年度の長者番付で3位に入ったアマンシオ・オルテガがプロデュースした、こだわりのロールケーキ」だけでは、アマンシオ・オルテガさんが何にこだわっているのかが不明ですし、そもそもアマンシオ・オルテガとは誰なのかと思う人が多いでしょうから、なかなか顧客(お客さん)の食欲を喚起できないでしょう。

ただし、「何だ、これは?」とか、「初めて見るから、試してみたい」という好奇心を満たすことも、ある種の「価値」の提供ですから、それをねらうというテクニックもありますが、比内地鶏ほどの効果があるかは保証できません。それよりむしろ、食べるシチュエーションや新しい食べ方の価値をつくり込んで、「記念日に喜ばれる、しっとりふわふわ感を1週間味わえるロールケーキ」とか、「職場での差し入れにも使える、小さめサイズのフィンガーロールケーキ」などをビジュアルとともに表現したほうが、顧客(お客さん)には響きそうです。

iPhoneにビデオ通話アプリが搭載されたときのCMに、こんなものがありました。出張中のお父さんの誕生日に、小さな娘とお母さんがケーキを用意してお祝いするというシチュエーションです。画面越しにお父さんがケーキのろうそくを吹き消す、そんなシーンもありました。このアプリがあれば、離れていても家にいるような疑似体験ができるよね、という表現です。そこには、Facetimeというアプリの名前も、カメラのスペックも一切登場しません。

このように、目には見えない価値を表現することで、顧客(お客さん)の心に刺さるメッセージが届けられます。顧客(お客さん)は、スマートフォンの「薄さ」が欲しいのではなく、「すっぽり手に収まること」が欲しいのです。同じように、顧客(お客さん)は、「こだわり」が欲しいのではなく、「美味しさ」や「安心」、場合によっては「希少性そのもの」が欲しいのだということを覚えておく必要があります。

 

一番伝えたいメッセージは左上に書く

大企業であれば広告予算も莫大ですから、テレビやラジオのCM、新聞・雑誌の広告、ポスター、チラシ、DM、ホームページ、店頭など、多くの媒体を使うことができます。このとき、すべての媒体に同じメッセージを乗せていくことが大切です。当たり前ですが、媒体によってメッセージが変わってしまっては、顧客(お客さん)は混乱します。それぞれのメディアを串刺しにするかのように、同じメッセージを乗せて、統一感のあるものにしていくのです。

これを「統合型コミュニケーション」、英語では「インテグレーテッド・マーケティング・コミュニケーション」と言います。メッセージを串刺しにして、どこで顧客(お客さん)が触れても同じものにする。顧客(お客さん)は、複数の媒体で何度も同じメッセージを見ることで、初めてその商品を覚えてくれるわけです。

したがって、効果的なプロモーションを行うには、複数の媒体を重ねて活用すること、メッセージを統一して一貫性のあるコミュニケーションを行うことが重要なのです。さらに、DM(ダイレクトメール)やチラシ、会社案内などの紙媒体、またホームページやメールマガジンなどのデジタル媒体、どちらも平面の媒体ですが、この平面の媒体を作ってメッセージをつくるとき、注意しておきたいポイントをひとつ紹介します。

媒体を活用する際は、デザインの美しさ、かっこよさももちろん大切ですが、顧客(お客さん)にメッセージをしっかりと伝えるために、コンテンツの配置や構成にも十分配慮する必要があります。その際、人間の目の動き方に着目して、コンテンツを配置すると、お客さんを効果的に誘導することができます。

人間は平面の媒体を見るとき、ある決まったパターンで目を動かすと言われています。左上から、英文字の「Z」や「F」をたどるように目を動かすのです。この特性を利用して、顧客(お客さん)の目が通過する位置に、一番伝えたいコンテンツを並べれば、目に留まる確立が高くなります。ですから、もっとも伝えたいこと、大切なことは左上に持ってくる。そこで顧客(お客さん)の注意をギュっと引く、キャッチするわけです。だから「キャッチコピー」というわけです。

逆に言うと、左上を見てもらえなければ、その下は絶対に見てもらえません。顧客目線(お客さんの目線)に立って、左上に顧客(お客さん)が感じるベネフィット、あるいは、顧客(お客さん)がまったく想像もしなかったようなこと、そういうものを入れて、顧客(お客さん)を惹きつける。それがポイントになります。

Sponsored Link

 

売れる通販番組のポイントはココだけ!

さらに、コンテンツの配置や構成について気をつけなければいけないことが、もうひとつあります。

通販会社のジャパネットたかたを例に考えてみましょう。たとえば、通販番組で高田明社長が薄型テレビを売るとき、番組構成はどのようになっているでしょうか。社長はあの独特の声と語り口で、まずは、薄型テレビの便利な機能について説明します。そのあと、それを使うとどんな楽しみ方ができるのか、その価値を再現映像などで解説します。そして、「古いテレビを3万円で下取ります」とか「テレビ台もつけます」といったサービスを伝えます。そして、一番最後に「こんなに価値のあるものが」と、商品の映像をバーンと見せて、「こんなにお買い得なお値段です」と価格を紹介するのです。

これは、番組を見ている顧客(お客さん)の心の動きを推測し、それに合わせた構成になっているわけです。商品やサービスを売りたい(買ってもらいたい)場合、商品の画像と値段、これを最後に持ってくるのが鉄則です。

では、なぜ値段を最初に持ってきてはいけないのでしょうか。それは、値段を見た瞬間に買う気がなくなる顧客(お客さん)がいるからです。はじめに「この薄型テレビは10万円です!」と言ったら、10万円より高級なものが欲しい顧客(お客さん)、あるいはもっと安い、5万円くらいのものを買おうと思っていた顧客(お客さん)は、その場でチャンネルを変えてしまいます。これは、テレビに限らず、どの媒体にも言えることです。

どんな媒体であっても、まず顧客(お客さん)の注意を引くことが大切です。キャッチコピーで注意を引いたら、ボディコピーやイメージ画像で、「これを使うとこんなに便利ですよ」「こんな風に楽しめますよ」といった価値をしっかり伝える。そして最後に、「こんなにお買い得なんです」と価格を告げます。これは絶対的基準で「価格が安い」と打ち出すのではなく、「この価値に対してこのお値段は、あなたにとって投資対効果がありますよ」という相対的価値を知らせるのです。

そして、価格を伝えたあと、最後の最後に・・・これが非常に重要ですが・・・顧客(お客さん)の購買行動を促すもの、たとえば、通販番組であればフリーダイヤルの番号、チラシであればそのお店の場所や電話番号、アマゾンの商品ページであればショッピングカートを提示します。

これらのような、顧客(お客さん)の「行動」を促す仕掛けを、マーケティング用語でCTA(Call to Action)」と言います。商品と値段のすぐ近くにCTA(Call to Action)を置くのがポイントです。CTA(Call to Action)はスーパーやコンビニのレジと同じです。商品の近くに置くことで、買いやすくなるので、顧客(お客さん)のレスポンスが大きく違ってきます。

■もうワンステップ上を目指してみる!!

・媒体の種類に問わず、商品を買ってもらうためにはまず顧客(お客さん)の注意を引きつける為のキャッチコピーが重要と説明をしました。しかし、いざそのようなキャッチコピーを考えても、なかなか売り上げとして結果に結びつかないのが現実です。そんな中、難しいスキル等なくても、ほんの少し「文章の書き方」を変えるだけで売り上げを何十倍にもアップしている人達がいます。その人達は、どういうキャッチコピーで売り上げを増やしていると思いますか?

 

前回あなたがデートで訪れたレストラン、店名は言えますか?

ここまで、広告やPRを考えるうえでの、「表現」について説明しました。けれども、自社の「表現」は、広告に限ったものではありません。たとえば、会社名や店名、商品名も表現のひとつです。名前を考えるときも、やはり顧客目線(お客さんの目線)に立つ必要があります。レストランの名前で考えて見ましょう。

Aさんは、東京都内にある「レストランキクチ」というお店が大好きでよく足を運びますが、このお店は、読んで字のごとく「菊池さんがやっているレストラン」です。菊池さんというシェフが、凄く美味しい洋食をつくって提供しているお店です。ですから、非常に覚えやすい。

一方で、Aさんが「デリジオサクジナイタリアーナ」という名前のレストランを出店したとします。素材はすべて本場イタリアから空輸している本格的なイタリアンレストランです。店主の思い入れやこだわりを込めて、レストランキクチより、さらに同じ方向性でイタリアっぽくしたいと名づけました。

しかし、日本人にとって、この店名は非常に覚えにくい。どんなにこだわりを持っていたとしても、顧客(お客さん)に伝わらなければ、自己満足にすぎません。これが、実際にある「ル カフェ ドゥ ジョエル・ロブション」のように、「ジョエル・ロブション」という名前そのものがブランド化されている。あるいは、そのお店が提供する価値が際立って高い、といった前提条件が満たされていれば、あまり障害にならないのでしょうが、ここまでもっていくのは、とてもハードルが高いことと言えます。

お店にとって、店名を顧客(お客さん)に認知してもらうことは非常に重要です。先にも書いたとおり、たんに「認知」されるだけでなく、「想起」してもらうのが一番です。「都内で美味しい洋食屋さんと言えば?」「レストランキクチです」、これが想起です。しかも、このとき、心の中で一番に思い浮かぶもの、これを「トップ・オブ・マインド・マーケットシェア(純粋想起)」と言います。最終的にお店は、ここを目指したいわけです。ですから、やはり顧客目線(お客さんの目線)に立って、顧客(お客さん)がわかりやすい、覚えやすい、思い出しやすい名前をつけたほうがいいはずです。

 

読めない名前はSNSに書き込めない

もちろん、わざと長い名前、覚えにくい名前をつけることによって、差別化をはかることも考えられます。少し前に大ベストセラーになった書籍、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』などにも、そうした面でたいへんユニークな事例です。

ミシュラン五ツ星でも覚えられない店名はクチコミしてもらえない

それでも同書は、「もしドラ」という略称がなければ、あれほどの大ベストセラーになったとは考えにくいでしょう。実際、同書を買った人に、「もしドラのタイトルって何でしたっけ?」と聞いてみると、かなりの人は正確に答えられないでしょう。略称である「もしドラ」という言葉が、メディアで紹介されたり、人々の会話で使われたりしたからこそ、商品も広く売れたのだと思います。長くてユニークなタイトルと覚えやすい略称、マーケティング的にもたいへん理にかなった戦略です。

最近は、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディア、食べログなどのクチコミサイト、前の記事内でも説明したアーンドメディアの影響力が大きくなってきました。

たとえば、あなたが「デリジオサクジナイタリアーナ」に行って、とても美味しいお店だったので、後日Facebook(フェイスブック)にアップしたいと思ったとします。そのときに、まず名前がはっきりと思い出せないと困ります。おぼろげに思い出せたとしても、店名を記す際に、「ジォ」なのか、それとも「ジオ」か、さらに「サクジイナ」なのか、「サクジナ」かと迷わせるだけで、ストレスとを与えてしまいます。

つまり、顧客(お客さん)がその名を口に出したり、書いたりする際にストレスを感じるということは、お店の名前そのものが広がりにくくなり、お店にとって大きな機会損失になります。これからは、ソーシャルメディアで顧客(お客さん)に自社の良さを拡散してもらうマーケティングが必須です。ですから、そういう意味でも、顧客(お客さん)にとって、わかりやすくして、表記しやすい社名、店名、商品名などをつけることも大切です。

■もうワンステップ上を目指してみる!!

・ITの普及により、現代ではFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディアの影響力がとても大きくなり、顧客(お客さん)に自社の良さを拡散してもらうマーケティングが必須になっているという話をしました。ですが、それらを行う上で一番の課題になるのが「いいね!」の数です。どんなに多くの人に知ってもらいたくても、「いいね!」の数が少ない為に拡散力そのものを強める事ができないという問題です。しかし、そんな中でも、多くの「いいね!」を獲得することでそれらをビジネスの集客に活用し、短期間で爆発的な宣伝効果での収入を得ている人達がいます。一体、その人達はどういう方法で「いいね!」を増やしていると思いますか?

 

自社でしか取り扱っていない商品にポイントカード(値引き)はいらない

さて、ここまで顧客(お客さん)に「どうやって」買ってもらうのかを考えるときに、「表現」「媒体」という側面からどうすべきかを考えてきました。しかし、「どうやって」の戦略は、当然これだけではありません。さらに考えなければならないことがあります。それは、セールスプロモーション販売促進(販促)です。この点についても、顧客目線(お客さんの目線)をはずしてはいけません。

販促には、試用品やおまけの提供など最終ユーザー向けの各種キャンペーンをはじめ、流通チャネルへの報酬など、さまざまな手法があります。そして、この販促手法のひとつに、ポイントカードがあります。最近は多くの企業やお店が採用しているので、誰の財布の中にも何枚か入っています。このポイントカード、導入すれば、顧客(お客さん)が繰り返しお店を利用してくれるかといったら、実際はそんなことはありません。自分のこととして考えてみてください。

たとえば、フレンチのお店のポイントカードを持っていたとして、何か特別な日に「ポイントカードがあるから、今日はこのお店に行こう」と思うでしょうか。私はほとんどありません。同じような雰囲気、料理の質、価格帯のフレンチのお店が2軒あったとして、どちらかを選ぶのであれば、ポイントが貯まるほうを選ぶかもしれません。けれども、多くの顧客(お客さん)にとって、ポイントカードそれ自体がお店選びの決め手となることはないでしょう。

ポイントカードは、集客のため、さらに言えばリピーター獲得のための顧客サービスです。導入しても集客力が上がらないのであれば、意味がありません。

実際に、あなたがよく利用するポイントカード、あるいはポイント制度を思い起こせば、大体は大手家電量販店のもの、さらにはネット通販の制度などではないでしょうか。これらの会社は、基本的には、「同じ商品」を販売することによって競争を繰り広げています。提供している商品が同じ場合、差別化をするには、「価格」が大きな競争のカギになることは、前の記事内でも説明したとおりです。

ポイント制度というのは、実質的には値引きを意味します。その値引きをポイント化することによって、価格競争をすると同時に、次も自分たちのお店、Webサイトで商品を買ってもらうように誘導しているわけです。ですから、提供している商品、サービスがユニークな価値を提供できれば、ポイントカードを発行して「値引き」するよりも、もっと効果的なリピート客の獲得方法が考えられるはずです。もし、今、ポイントカードを検討しているのならば、安易に導入したりせず、まずは顧客(お客さん)中心の立場に立って、何ができるかを考えてみるべきでしょう。

 

消費者は「店舗」で商品をチェックして「インターネット」で購入する

家電量販店は価格競争を繰り広げると説明しましたが、ユニークな戦略で成功している会社にエディオンがあります。

ミシュラン五ツ星でも覚えられない店名はクチコミしてもらえない

家電量販店は、ポイント制度を導入すると同時に、「なるべく安く買いたい」と考える顧客(お客さん)を逃さないよう、「他店より1円でも高い商品はお知らせください。価格を相談します」などの張り紙が張られ、常に競争との激しい値引き合戦が行われているわけです。さらに、「もっと安く買いたい」という人の場合は、家電量販店で商品を実際にチェックしてみて、欲しいと思ったら、その店舗ではなく、インターネットのオンラインショッピングで購入します。価格比較サイトを見て、最安値のお店、場合によっては通販などで買い求めることになります。

これが、いわゆる「ショールーミング」と言われるもので、小売業全般にとって、大きな問題となっています。ところが、家電量販店のエディオンは、競争の必要上、ポイント制度は導入しているのですが、それ以外にも、さまざまな仕掛けで顧客(お客さん)を惹きつけ、そのまま商品の購入につなげることに成功しています。

デジカメ教室やタブレット教室、調理教室といったカルチャー教室を設けて、さまざまなイベントやプログラムを開催。購入を検討している顧客(お客さん)から、購入後に商品の活用方法を知りたい顧客(お客さん)までをきっちりフォローし、取り込んでいるとのことです。

商品の操作性や使い勝手を思う存分体験できる売り場、顧客(お客さん)を楽しませる体験型のお店づくりをすることで、家電製品そのものを売るのではなく、製品を使ったときの楽しさやワクワク感、さらには購入後のサポートといった「価値」を売っているので、値引き合戦や価格競争に巻き込まれずにすむわけです。

 

価格が高い商品は実際に「体験」してもらう

上記記事内にて説明した、家電量販店エディオンで行っているような販促方法は、顧客(お客さん)に商品の価値を経験してもらうことから、「経験価値(エクスペリエンシャル)マーケティング」と言います。【お客さんには、「唐揚げ弁当」を勧めましょう】で説明したIKEA(イケア)の売り方も、これにあたるでしょう。

この顧客(お客さん)の価値体験を重視する方法は、昔からあったものですが、21世紀に入って、大きなブームとなりました。従来のマーケティング活動では、商品やサービスの「機能」の違いを生み出し、それをアピールすることに重点が置かれていきました。そこで重視されるのは、商品の機能を宣伝などで広めるマス・マーケティング的手法です。

けれども、商品やサービスがあふれている時代、売れない時代には、商品の「機能」ではなく、商品を使って感じる心地よさや満足感といった「価値」を提供すべきという考えに立った手法が、この経験価値マーケティングで、「高関与商品」で行われることが多いです。

高関与商品とは、家具や家電、自動車や生命保険など、比較的高額で、顧客(お客さん)にとって購買の意思決定までにさまざまなことを時間をかけて考える商品のことです。試し買いもしにくく、また、間違ったものを買ったときの損害が大きい。購入の際、顧客(お客さん)は情報収集や候補商品の比較をするなどして、慎重に検討するわけです。

そのため、売る側は、たとえば顧客(お客さん)の来店を促し、体験してもらうことで、商品の魅力、機能面からだけでは推測できない「価値」を実感してもらい、購入検討へと導きます。そうすることで、ブランドや企業と顧客(お客さん)との個別の距離を縮めることも可能になります。

一方、低関与商品とは、食品や日用品などの比較的価格の安い商品を指します。じっくり検討して購入するというよりは、「広告で見た」とか「何となく」といった感覚で買われることが多いものです。そのため、高関与商品と低関与商品とでは、売るためにとるべきアプローチを買える必要があるわけです。とはいえ、低関与商品に経験価値マーケティングが効かないわけではありません。

たとえば、街の八百屋さんであれば、定期的に旬野菜の試食会を行う。パン屋さんであれば、季節ごとにパンの試食会を開催する、というのは効果が高そうです。その際に、お洒落なホームページや食事会など、野菜を使った料理をするシチュエーションを提案したり、またパンを食べることによって、町内での交流を深められるなど、機能的価値とは別の価値を提案することによって、高い効果が得られそうです。

 

「新規顧客(初めて来てくれるお客さん)」と「雨の日に来てくれる顧客(雨の日に来てくれるお客さん)」の違い

先ほど、ポイントカードを安易に導入しても意味がないと書きましたが、これと同様に、やってしまいがちな失敗にクーポンがあります。

基本的に新規顧客を集めるために配布する割引クーポンはNGです。なぜかというと、新規集客のために割引クーポンを出してしまうと、価格に対してのみ敏感な顧客(お客さん)を集めてしまう恐れがあるからです。「サービスなんてどこでも同じ。だから1円でも安いほうがいい」という顧客(お客さん)ばかりを集めてしまうと、企業として、また商店としても付加価値の高い商品やサービスを提供しにくくなります。それは避けるべきです。

しかし、すべてのクーポンがダメかというと、そういうわけではありません。例えば、あなたの近所に美味しい洋食屋さんがあります。けっこう気に入っているお店で、雨の日に一度、彼女(奥さん)と食べに行きました。食べ終わって会計を済ませたときに、店員さんが「今日は雨の中、ありがとうございました」と言い、「雨の日割引券」というクーポンをくれました。次回来店時に10パーセントオフになるというクーポンです。これならOKです。

新規集客のクーポン雨の日のクーポン、何が違うかわかりますか?違うのは、「雨の日割引券」は1回以上来た顧客(お客さん)にサービスとして渡している、という点です。一度来店してくれた顧客(お客さん)に、2回、3回と来てもらう。リピーターになってもらう。それが大事なのです。新規の顧客(お客さん)を集めたいという気持ちが強いと、つい割引クーポンを出したくなりますが、クーポンは1回以上来てくれた顧客(お客さん)に限る。そう決めておいたほうがいいのではないかと思います。

この雨の日クーポンの考え方は、【住宅展示場では、夫(旦那)に家を売ってはいけない】で説明した「おもてなし戦略」と通じるところもあるので、マーケティング戦略としても合理的だと思います。

 

「おもてなしの心」の基本は、商品を売らないこと

顧客中心(お客さんを中心に考える)になるということは、「おもてなしの心」につながる考える方です。ただし、「おもてなし」というと、つい売る側が顧客(お客さん)に対して、アクティブにサービスなどを提供する、あるいは積極的に関与するというイメージがありますが、そうとばかりも言えません。

ある、Aさんという経営者の方がいます。Aさんは、イタリアのラグジュアリーブランドに勤めていた経験があり、同社の店長だった頃に、イタリア本店を上回る売り上げを達成したとして、伝説になっている方です。そのAさんのお弟子さん曰く、Aさんから教わったもっとも大事な接客法は、「売るな」と「見るな」だったそうです。

ラグジュアリーブランドですから、靴一足が10万円、バッグなら数十万円といった価格帯もざらです。そういう高級品を買いに来た顧客(お客さん)に商品を売り込もうとしたり、じろじろ見たりすることは絶対にNGだというのです。たとえ、顧客(お客さん)が試着をしているときでも、売り込むことはおろか、直接見ることも控える。直接見ないで、鏡を通して見るようにする。そういう接客待遇をするのだそうです。

さらに言うと、顧客(お客さん)がお店に入って来たときに、「いらっしゃいませ」という声はかけない。なぜなら、この言葉がすでに「売ってしまっている」ことになるからです。ですからこれを「こんにちは」にする。「こんにちは」は挨拶ですから、売っていることにはならないわけです。

Aさんは、「いらっしゃいませはダメ。こんにちはと言いなさい」と具体的に教えるわけではありません。顧客(お客さん)の心を読んで、相手が緊張しないようにするにはどうしたらいいのかを考えなさい、と言うだけです。

しばしば、顧客(お客さん)を相手に仕事をする場合、マニュアル的な対応をすることがありますが、人間は一人ひとり、性格、置かれている状況、そのときの気分がまったく違います。このように個性が違う顧客(お客さん)に対応するのには、きちんと相手に向き合って、良好な関係を構築することが必要になります。それが、おもてなしの心を発揮するということだからです。

 

あなたのお給料は、常連さんが増やしてくれる

マーケティングとは、「自然に売れる仕組みをつくる」ことです。そのためには、いかに顧客(お客さん)と良好な関係を持続的に保っていくか、ということが重要になってきます。

自社の商品やサービスを一度でも買ってくれた顧客(お客さん)に、長期にわたって安定したリピーターになってもらう。そのような顧客(お客さん)との良好な関係性を重視したマーケティングを「リレーションシップ(関係性)・マーケティング」と言います。この理論の背景には、一部の優良な顧客(お客さん)が、売り上げの大半を占めるという考え方があります。これは、経済学などで用いられる、「パレートの法則」の理論とも近いもので、大きな数字は、一部の小さな要因によって決定されるというものです。

ビジネスの経験則でもよく言われる話に似ています。「会社に10人の社員がいたら、2人は優秀、6人は普通、残りの2人はダメな人。そして会社の収益の8割は、2人の優秀な社員がつくっている」。思い当たるふしがないでしょうか。

マーケティングの世界でも、同じような考え方があります。つまり、1人ひとりの顧客(お客さん)を大切にすることによって、良好な関係性を構築し、何度も利用してもらう。そうして、顧客ロイヤルティ、ブランド・ロイヤルティを高めることによって収益を上げる、というものです。

ロイヤリティとは、日本語に直訳すると「忠誠」という意味になりますが、この場合では、顧客(お客さん)が企業やブランド、さらに商品などに対して、愛着心や信頼の念を抱くことと覚えていただければいいでしょう。顧客(お客さん)に愛着心を持ってもらうには、売り手側も顧客(お客さん)を大切にすることが必要になります。そして、それが顧客(お客さん)が「実感」できるような仕組みをつくらなければいけません。ここでは、3つの種類のリレーションシップ・マーケティングの例を紹介しましょう。

 

顧客(お客さん)が一番欲しいものを提供する

ナイキという世界的なスポーツブランドは誰もが知っています。スポーツ界のトップアスリートたちが愛用していることもあり、彼らに憧れる世界中の若者から絶大な支持を受けています。特に人気があるのがスニーカーです。男女問わず、ファッションアイテムとしても人気を集めています。

そのナイキのスニーカー、同社ウェブサイトに行くと、自分好みにカスタマイズしたものをオーダーすることができます。全体の色はもちろん、ひもやソール、ナイキのロゴであるスウォッシュ部分の色、柄、素材など、多くのバリエーションから選べるようになっているのです。これは、いわゆるスーツのパターンオーダーと同じです。あらかじめ用意されている選択肢から顧客(お客さん)に好きなものを選んでもらって、提供しようというものです。

ミシュラン五ツ星でも覚えられない店名はクチコミしてもらえない

このように、1人ひとりの顧客(お客さん)の要望に応えて、受注生産を大量生産のコンセプトを取り入れて低コストで実現する。そのような手法を「マス・カスタマイゼーション(大衆カスタマイズ戦略)」と言います。これは、大企業だからできるというわけではありません。中小企業でも十分に可能です。

スニーカーにしろ、洋服にしろ、自分だけのオリジナルのものを、「こんなのつくったよ」と言ってFacebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)などのソーシャルメディアにアップすれば、それが自然に拡散していきます。そういう意味でも、このマス・カスタマイゼーションは、顧客(お客さん)との関係性を強化するには非常に良い手法です。

 

コールセンターのオペレーターが一番偉い通販会社

大衆カスタマイズ戦略に続き、次に話をするのは、少量生産型のマーケティングと言えます。顧客1人ひとりの購買履歴やニーズに合わせ、応答する内容を変えて個別に働きかけるというマーケティングです。これをワンツーワンマーケティングと言います。このワンツーワンマーケティングの取り組みで有名なのが、ザ・リッツ・カールトンです。訓練されたスタッフによる徹底した顧客サービスで「感動を呼ぶホテル」と言われています。

ミシュラン五ツ星でも覚えられない店名はクチコミしてもらえない

ホテルのスタッフは全員、「クレド・カード」と呼ばれるカードを携帯しています。クレドとは、ラテン語で「信条」「約束」を意味する言葉で、「企業理念」や「行動指針」と訳されるものです。つまり、このカードにはスタッフの使命が記されており、それを常に携帯することで、クレドを意識した行動がとれるようになるわけです。

ザ・リッツ・カールトンが提供するのは、ノーと言わないサービスです。無理な注文にも「ノー」とは言わずに、代案を提示する。そんな顧客(お客さん)1人ひとりの立場に立ったサービスが感動を生み、それがソーシャルメディアなどのクチコミによって拡散し、さらなるファンを増やす。そういう好循環のサイクルを起こしています。

ワンツーワンマーケティングを実践する会社として、もうひとつ、アメリカのザッポスという靴を中心としたオンラインショップが有名です。

ミシュラン五ツ星でも覚えられない店名はクチコミしてもらえない

通常、通販のコールセンターには徹底したマニュアルがあり、顧客(お客さん)への対応の仕方が決められています。効率化を図るために、「1人のお客さんは3分以内に処理してください」というような指示を出す会社もあるそうです。けれども、ザッポスは、顧客対応(お客さん対応)のすべてをオペレーターの判断に任せています。顧客満足のためなら何時間応対してもかまわないというスタンスなのだそうです。ですから、顧客(お客さん)1人ひとりに合わせたサービスが提供できるわけです。

こんな有名な逸話があるそうです。ある顧客(お客さん)が、病床の母親へのプレゼントのためにザッポスで靴を買ったのですが、母親は亡くなってしまった。そして、顧客(お客さん)のもとにザッポスから靴の様子を尋ねるメールが届き、「返品したい」とオペレーターに申し出ると、規約にない宅配の集荷便を手配してくれたうえに、オペレーターの判断でメッセージを添えたお悔やみの花を届けたのだそうです。

感動したその顧客(お客さん)がこの話をブログに書き、ネットに拡散して、世界中の人が知ることとなりました。お互いの顔が見えないオンラインショッピングでも、このようなサービスが実際にできるわけです。顧客(お客さん)1人ひとりのことを考えて、最適なサービスを提供する。これからの時代、ワンツーワンマーケティングで顧客関係性を築いていくことが非常に大事になっていきます。

 

「囲い込まれたい」と思っているお客さんはいない

顧客(お客さん)と1対1の関係性が重要だと説明しましたが、誤解してはいけないのは、こちらのアプローチが相手にとって絶対に不快であってはならない、ということです。

IT化が進んで世の中たいへん便利になりましたが、その便利さを逆手にとってしまう人がたまにいます。最近でこそ少なくなりましたが、以前は、名刺交換をするとメールマガジンが送られてくる、ということがよくありました。それがたとえ相手にとって有益なものでも、やはり最初に届いたときは、「えっ、何これ?」と戸惑います。事前に許可をとったうえで送るのであればいいのですが、このやり方では、仮に役立つ情報を提供していたとしても、好感度を下げる可能性があります。

こちらは、売りたい、知られたいという意識、よかれという気持ちで行っている行動が、かえって反感とともに「想起」されると、大いなる逆効果となってしまいます。これを避けるためには、きちんと「許可」を得ることです。

Amazon(アマゾン)で一度買い物をすると、おすすめの商品を紹介するメールが届くようになります。これは、初めて買い物をしたときに、「今後、ダイレクトメールを送ってもいいですか」という許可を求められ、承諾した人にだけ送ってきているわけです。

このように、事前に許可(パーミッション)を得た顧客(お客さん)に対してのみ、ダイレクトメールなどのマーケティング活動を行うことを「パーミッション・マーケティング」と言います。これは、マーケティングに関する著作が多い、アメリカのセス・ゴーディンによって提唱された考え方です。一方的に発信する広告メールは、受け手側にマイナスのイメージを抱かせるので、裏目に出る場合があります。けれども、あらかじめ許可をとっている場合は、強引さが感じられないため、受け手側に交換を持たれ、企業とのコミュニケーション率が高まります。

パーミッション・マーケティングでもっとも一般的なのが、自分の興味のある分野を事前に登録し、それに関連する情報を受け取ることを許可したうえで配信される「オプトインメール」というダイレクトメールです。これは、顧客(お客さん)のニーズに合った情報を個別に提供するという意味で、ワンツーワンマーケティングの進化系と言えるでしょう。

ITがどんどん便利になってきて、「ITリテラシー」が重要だと言われるようになりましたが、それと同じくらい、相手のことを考える「ITデリカシー」が大事になってくると思います。ITの時代に、顧客(お客さん)と良好な関係性をつくっていくには、こういう配慮が欠かせないものとなるはずです。

 

ニュースレターは「ラブレター」。ラブレターであなたの自慢をしてはいけない

3つのリレーションシップ・マーケティングについてお話ししましたが、顧客(お客さん)と良好な関係を保つ方法は、工夫次第でいくらでも生み出せます。一度顧客(お客さん)になってくれた人と関係性を上手に維持している会社があります。住まいの設計・デザインを行うハウスメイト(※仮名)です。

家は、ほとんどの人にとって一生に一度の買い物ですから、食料品のように、「今日買ってくれたお客さんに明日も買ってもらう」というわけにはいきません。リピーターになってもらうことが難しいわけです。ではどうするのか。顧客(お客さん)から別の顧客(お客さん)を紹介してもらうのです。その場合にやってしまいがちな間違いが、「紹介してくれたら5,000円差し上げます」というサービスです。それ自体は別に悪いことではありませんが、こんなサービスをしなくても、「本当に良いものを提供した」ということがしっかりと伝わっていれば、顧客(お客さん)はクチコミしてくれるはずです。

同社では、毎月ニュースレターを作って、過去の顧客(お客さん)に届けています。中身は、最新の施工事例と顧客(お客さん)の声だけ。売り込みは一切なしです。売り込んだところで、その顧客(お客さん)にもう一度施主になってもらえる見込みはほとんどないからです。ではなぜニュースレターを送るのか。その理由は2つあります。ひとつは、その顧客(お客さん)に自分たちのことを思い出してもらうためです。最新の情報を提供することで、「この会社は他にもこんな素敵な家を建てているのか」と思ってもらうわけです。

もうひとつは、会社名を覚えてもらうためです。たとえば、その顧客(お客さん)の友人が家に遊びに来て、「あなたのキッチン素敵ね。どこで頼んだの?」と聞かれたときに、「ハウスメイト(※仮名)だよ」と答えてもらうためです。そして、「このニュースレター見る?」と友達に見せてもらえたら成功です。ですから、ニュースレターの最終面に社名や電話番号、住所は記載してありますが、「お客さんを紹介してください」という文言は一切ありません。

このニュースレターは、過去の顧客全員(お客さん全員)に送っているわけではありません。今までの顧客リストを精査して絞った顧客(お客さん)にのみ送っています。全員に送っていては効率が悪くなるからです。なるべく直近に利用してくれ、使用金額が高く、かつ同社と相性が良いと感じられた顧客(お客さん)、そういった人に絞っているのです。まさにRFM分析ビッグデータ分析を行って狙いを定めているプロモーションです。

 

一度商品を買ってくれた顧客(お客さん)がリピートしてくれない最大の理由は、「思い出してもらえない」から

同じように、毎月ニュースレターを出している和菓子屋さんがあります。このお店は、毎月、月替わりでかりんとうを販売しています。季節に合わせた野菜や食材を使って、さつまいもかりんとう、生姜かりんとう、きんぴらごぼうかりんとうといった具合に、見た目にも美味しいかりんとうが人気を集めています。

このお店のニュースレター、表面は今月のかりんとう、裏面はカレンダーになっていて、そこに栄養士さんがつくったレシピと一口健康メモが載っています。これにも売り込みの文言は一切ありません。

このニュースレターは、カレンダーにもなっているので、冷蔵庫などに貼っておいてもらえるようになっています。またレシピも、たとえば「牛乳かりんとう」など、ちょっと気の利いた品のつくり方などが載っているので、顧客(お客さん)にとっておいてもらえたりもします。そうすると、顧客(お客さん)は無意識のうちにしばしば目にするようになるので、たとえば、「今月は母の日だから、このお店にかりんとうを買いに行こう」という購買行動につながることが期待できます。

一度買ってくれた顧客(お客さん)がリピートしてくれない最大の理由は、思い出してもらえないからです。つまり、始めに説明したように想起されないからなのです。知ってもらうだけでは十分ではなく、覚えていてもらう。何度も利用してもらう、しょっちゅう目にする、そして、そのお店や企業、商品に接したときに「好印象」を持ってもらうことで初めて思い出してもらえるのです。つまり、

インパクト×回数=想起 

となります。これがポイントです。顧客(お客さん)の心理、行動の先を読んだ仕掛け、プロモーションの仕組みが構築できると、自然に売れていくようになります。今まで説明してきた「どうやって」について、広告・PRにしろ、プロモーションにしろ、成功している事例は、「売りたい、もうけたい」という売り手目線から離れて、「どうすれば、顧客(お客さん)に喜んでもらえるだろう」「どうすれば、顧客(お客さん)に価値を提供できるだろう」という意識を強く持って、徹底的に考えているケースばかりです。

これは、決して、きれいごとではありません。顧客中心(お客さん中心)の思想を見失ったビジネスは、短期的には売り上げや利益を高めることはあっても、中長期的に成果を継続することが難しいのは、多くの企業不祥事、あるいは不振企業の事例などを見れば、明らかです。そういう意味でも、「どうやって」を考えるときには、やはり顧客目線(お客さん目線)になることが重要なのです。

Sponsored Link

 
★↓↓是非クリックしていただけると記事作成の励みになりますヾ(;´▽`A↓↓★
⇒ 今何位? <人気ブログランキング>
人気ブログランキング

 

 

前の記事へ
次の記事へ