メルマガ・バックナンバー | 【第28回】「ビジネス」と「インターネットビジネス(オンラインビジネス)」の違い




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「ビジネス」と「インターネットビジネス(オンラインビジネス)」の違い


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オンラインビジネスというと、これまでのビジネスとはまったく異なった、何か特別で特殊なものという印象を持たれているかもしれません。

 

 

 

本当にインターネットビジネス(オンラインビジネス)が特殊なものであるかはさておき、確かにインターネットは、ある一面でビジネスのあり方を大きく変えました。

 

 

 

インターネットビジネス(オンラインビジネス)がビジネスをどう変えたかを述べる前に、まず、インターネットビジネス(オンラインビジネス)に限らず、そもそもビジネスとは、どうやってお金を生んできたのかを考えてみましょう。

 

 

 

お金を生むとは、つまり利益を上げることですが、利益というのは単純に言ってしまうと、売値と仕入れ値の差額です。ですから、より大きな利益を得るには、できるだけ安く商品を仕入れて、できるだけ高く売ればいいことになります。これをもっと正確に表現すると、

 

 

 

「(その商品を)安いと感じているところから仕入れて、高く感じているところへ売る」

 

 

 

ということになります。この原型的な例が、大航海時代にスペインやポルトガルが行っていた香辛料貿易です。インドから胡椒(コショウ)などの香辛料や紅茶を仕入れて、それをヨーロッパに運んで売っていました。

 

 

 

胡椒(コショウ)や紅茶の元となる植物はインドではそこらへんに生えているものですから、インドの人にとっては珍しいものではありません。ですからことさら価値を認められているわけではなく、値段もとても安い。

 

 

 

つまりインドという場所は、香辛料という商品を「安いと感じているところ」になります。それとは反対にヨーロッパでは、もともと自分たちの土地には存在しないものですから、とても珍しい、貴重なものと考えられています。

 

 

 

なんでもインドとかいう何処にあるのかも分からない遠い国からはるばる運んでくるものだと聞かされると、ますます有り難味が増すというものです。しかもこれを料理に使うととても美味しいし、その辛味は刺激的で癖になる。

 

 

 

食という根源的な欲求を充足させてくれるものですから、それを満たすためにお金を積む事には躊躇しません。その結果、胡椒(コショウ)一粒に金一粒と同じ値段がついてしまうなんていうことになってしまうのです。

 

 

 

まさにこの商品を「高く感じているところ」だったわけです。この事が示しているように、同じものでも場所によって、その価値がまったく違ってきます。この「場所によって違う価値の差」をお金に換える、これが商売の原点です。

 

 

 

インドでは価値が低いとされていた香辛料が、ヨーロッパでは貴重品としてありがたられる、高く評価される。この価値の差が利益を生むのです。

 

 

 

逆の言い方をすると、ビジネスで利益を得るためには、この「場所による価値の違い」を正しく認識しなければならないということです。売ろうとしている商品の価値が最も低い場所と高い場所をきちんと把握できるかどうかが、最初の関門になります。

 

 

 

この価値の差を生む場所は、商品ごとに違うのはもちろんのこと、季節や天候や、そのほかのさまざまな要因によって刻々と変化するでしょう。それを含めて、常に正しい組み合わせを選べるかどうか。つまり、

 

 

 

売ろうとする商品

 

●その商品の価値が最も低い場所(仕入れ地)

 

●商品の価値が最も高い場所(消費地)

 

 

 

の3つを結びつけるマッチングが、ビジネスのキーになるのです。大航海時代のスペインやポルトガルは、大船団を組んでアフリカ大陸をぐるっと回り込むような高いコストを払っていました。

 

 

 

それでもなお、この貿易が莫大な利益を彼らのもたらしたのは、香辛料という商品インドという仕入れ地、そしてヨーロッパという消費地の3つが適切に選択されていたからです。

 

 

 

 

 

商品そのものの「価値」を変えたインターネット

ところがインターネットの出現によって、このあたりの事情に変化が起きました。インターネットの最大の特徴は、空間(距離)内、時間的な制約なしに世界中を結ぶ、ということです。

 

 

 

つまり、二つの場所が空間的にどんなに距離が離れていようが、相手の事情が手に取るように分かってしまう。

 

 

 

これがどんな現象を生むかと言えば、これまでビジネスを成立させていた「場所による価値の違いをお金に換えるからくり」を白日の元に晒してしまうものです。

 

 

 

香辛料がヨーロッパで高価なものだったのは、ヨーロッパの人たちが、それがインドにはいくらでもあるものだということを知らなかったからです。ヨーロッパとインドはあまりにも遠かったので、ヨーロッパの人たちはインドのことをほとんど何も知りませんでした。

 

 

 

「胡椒(コショウ)なんてインドにはそこらじゅうにあって、とても安い」という情報は、ヨーロッパには持たらされてなかったのです。もちろん胡椒(コショウ)を買い付けに行っている商人たちはそのことを知っていますが、彼らがそれを口外するはずがありません。

 

 

 

ヨーロッパの人たちが、そのことを知らないために高値で買ってくれている事を、よく承知しているからです。またインドの人たちも、胡椒(コショウ)のようなものを金と同じ値段で買う人がいるなどとは、想像すらしていなかったでしょう。

 

 

 

情報が共有されることで「場所による価値の差」そのものが無くなってしまうのです。まったく無くなることはないかもしれませんが、それはとても小さなものになってしまう。

 

 

 

となるとつまり「場所による価値の違いを金に換える」というビジネスモデルが成立しにくくなってしまう。成立するにしても、そこから得られる利益はずっと小さくなってしまうのです。

 

 

 

 

 

インターネットが普及し、金を払う対象が「モノ」から「情報」に置き換わった

インターネットは「価値の違いを金に換える」ビジネスをやりにくくしてしまいましたが、それでも全く出来なくなったわけではありません。やや様相を変えながらではありますが、インターネットのビジネスとしても残っています。

 

 

 

その一例がリクルートに代表されるような情報ビジネスです。ここでは「価値の差」が「情報の差」に置き換わることで、ビジネスとして成立しています。転職ビジネスを例にして考察してみましょう。

 

 

 

転職を考えている人は世の中に相当数いるだろうと思いますが、皆さんかなり不安を持っているはずです。

 

 

 

転職というのは一人の人が何度も経験するものではありませんから、ほとんどの人は転職初心者で、上手な転職をするためには何をどうすればいいのか、分からないからです。

 

 

 

ですから「転職ってこうやればいいんだよ」という転職ノウハウは、転職希望者にとっては非常に価値の高いものになります。その情報を提供してくれる企業(リクルート)はとてもありがたい存在です。

 

 

 

そこで、転職希望者たちは住所氏名をはじめ、希望する職種や収入、勤務地などといった情報をリクルートに対して開示してくれるのです。開示すればいいことがあると感じるわけです。

 

 

 

一方、転職者を受け入れたい企業にしてみると、転職したいと思っている人がいるのは間違いないのだけれど、それが何処にいるのかが分からない。何処にいるか分からない転職希望者を探すのは、とても大変です。

 

 

 

そこで自分たちの代わりに転職希望者を探してくれる人がいれば、紹介してくれた転職希望者一人あたり10万円なり20万円なりという報酬を払おうということになります。

 

 

 

その「転職希望者がどこにいるか」を知っているのがリクルートです。ここにビジネスが生まれるわけです。

 

 

 

ここでは「転職ノウハウ」という情報を持つ、持たないという情報のギャップ「転職希望者の個人情報」を持つ持たないという情報のギャップが、ビジネスになっています。香辛料のような「モノ」が「情報」に置き換わったと言っていいのかもしれません。

 

 

 

ここでリクルートがやっているのは、世界中に点在している情報(この例では「転職希望者」つまり「ユーザ」)を探し出して一ヶ所(リクルート)に集めるということです。そのことが価値を生んでいます。

 

 

 

そして、その価値に対して、転職者を探している企業は、金(お金)を払うのです。そして実はこの「点在する情報を一ヶ所に集める」という作業は、インターネットが非常に得意とするところでもあります。

 

 

 

これがインターネット上のビジネスでは基本的なスタイルのひとつになっています。

 

 

 

 

 

集まった「人」そのものが商品になる

リクルートがやっているのは、世界中に点在しているユーザを集めて、ユーザを探している企業と結びつけるという作業です。ここに生じる価値をお金に換えている。ユーザと企業を結びつけるマッチングの価値でビジネスをしているのです。

 

 

 

点在するユーザと企業を結びつけることは、言い方を換えると、ユーザ自身が取引きの対象になるということです。

 

 

 

つまり、インターネット以前のビジネスは「モノを安く仕入れて高く売る」ものでしたが、インターネットのビジネスというのは「ユーザを安く仕入れて高く売る」ものと言えるのです。

 

 

 

どういうことなのか、このビジネスの典型であるGoogleを例にとって説明していきましょう(※実際に行われているビジネスはもっと複雑で違うものですが、分かりやすくするために単純化した架空のモデルで説明します)。

 

 

 

東京の丸の内でコーヒーを飲める店を探しているユーザがいるとしましょう。その人は丸の内の喫茶店なりカフェなりを探すためにスマホで「Googleマップ」のアプリを開きました。

 

 

 

「Googleマップ」のアプリ上には飲食店やホテル、コンビニなどのショップの位置にアイコンが表示されて、アイコンをタップすればお店の詳細や情報を見ることができます。実はここですでにGoogleは「ユーザを仕入れた」ことになるのです。

 

 

 

ユーザがGoogleの元に来てくれたわけですが、このあとこのユーザはGoogleに収入をもたらしてくれるかもしれないからです。というのは、このユーザを買いたい企業があるのです。自分達のお店に誘導したい喫茶店やカフェです。

 

 

 

そこでGoogleは「Googleマップ」のアプリで店のアイコンをクリックして情報を見たユーザを、1クリックあたり15円で売るのです。ちなみに、このユーザは自分から「Googleマップ」のアプリを開いて来てくれましたから、仕入れにかかったコストはありません。

 

 

 

つまりGoogleは「丸の内でコーヒーを飲もうとしているユーザ」を0円で仕入れて、「1クリック15円」の対価で「丸の内のカフェ」に売ったことになります。この関係においては、取り引きの対象は「モノ」でも「情報」でもなく「ユーザ自身」になっています。

 

 

 

「ユーザを安く仕入れて高く売る」とは、こういうことです。

 

 

 

ただし、Googleにしても、いつでもユーザ一人あたりの15円をそのまま手に入れられるわけではありません。

 

 

 

先ほどの「ユーザを0円で仕入れた」という表現は、Googleが能動的に(コストをかけて)呼んできたものではないという意味で0円なのですが、実際にはもう少し複雑なシステムになっています。

 

 

 

丸の内にいるユーザが「このあたりでコーヒーが飲める店はないかな?」と思ったとき、現実にはスマートフォンなどの携帯端末を開くことになります。「Googleマップ」アプリはあくまでも携帯端末に載ったものなので、携帯端末あってこその「Google マップ」アプリです。

 

 

 

例えばiPhoneユーザがiPhoneの「Googleマップ」アプリを開いた場合は、iPhoneがユーザの窓口になっているわけです。ですからiPhoneユーザがクリックしたときには、窓口になったことへの手数料のような意味で、15円の一部をAppleに渡すということをしています。

 

 

 

つまりGoogleはユーザを安く仕入れて高く売っている。端末メーカーはそのGoogleの窓口になることで収入を得る。これがインターネットビジネスなのです。バナー広告のような企業から広告費をもらうビジネスも、構造的にはこれと同じです。

 

 

 

例えばニュースサイトにはニュースを読みたいユーザが集まってくるわけですが、経済ニュースを読みに来ている人は当然経済に興味を持っている人です。

 

 

 

そこで経済ニュースのページにFXサイトのバナー広告を表示させてユーザをFXサイトに誘導すれば、そのバナーをクリックしてくれる可能性が高い。これもニュースを読みに来たユーザを、FXサイトに売っているわけです。

 

 

 

世界中に散在しているユーザを一ヶ所に集めて、そのユーザを金を出しても欲しいと思っている企業や人と結びつける、マッチングするのが、インターネットビジネス(オンラインビジネス)なのです。

 

 

 

 

 

「ユーザ(お客さん)」を探すのにはお金がかかる

ユーザを探し、集めることは、実はとても大変なことです。それがどれほど大変なことなのかは、実際にGoogleが莫大な利益を上げていることからも明らかでしょう。

 

 

 

多くの企業が自分たちの手に余るほど大変だと感じているからこそ、それを代わりにやってくれる会社、すなわちGoogleにお金を払っているわけです。当然のことながら、Googleにとってもユーザを探し出すのは簡単なことではありません。

 

 

 

GoogleはGoogleで、かなりのコスト、労力をかけて、ユーザを探しているのです。日本ではあまり馴染みがありませんが、TAC(Traffic Acquisition Cost)という財務指標があります。これは何かと言うと、ユーザを獲得するために払っているコストです。

 

 

 

GoogleもMicrosoftもYahoo!も、企業が評価されるときには売り上げから必ずこのTACが引かれることになります。

 

 

 

Googleが集めているユーザには、Google検索や「Googleマップ」アプリなどで何もしなくても集まってくる人もいますが、それとは別のルートで集めているユーザもいます。

 

 

 

例えばGoogleは検索に関してAOL(America Online)と提携していて、AOLの検索サービスは現在Googleの検索エンジンを使っています。

 

 

 

AOLのサイトからウェブ検索を実行すると、検索結果画面には「enhanced by Google」の文字が表示されますが、実際にはこの検索結果画面自体がGoogleのものになっています。

 

 

 

このページにある広告をクリックすることでGoogleに広告料金が入るのは、Googleオリジナルのウェブ検索画面と同様です。つまりGoogleは、AOLに検索エンジンを使ってもらうことで、AOLを経由したユーザを集めているわけです。

 

 

 

そして、AOLの窓口になってもらっていることの対価として、GoogleはAOL経由のユーザがクリックすることで得た収入の何十パーセントかを、AOLに支払っているのです。この基本的な関係は、iPhoneのAppleと同じです。

 

 

 

しかしAOLの検索エンジンを使うために、Microsoftがもっといい条件をAOLに提示すれば、AOLの検索エンジンはMicrosoftのものに置き換えられてしまうかもしれません。

 

 

 

検索エンジンがMicrosoftのものになってしまえば、AOL経由のユーザはまるごとそのままMicrosoftに流れることになってしまいます。そうなれば、これまでAOL経由のユーザがもたらしてくれたお金はGoogleには入ってこなくなるわけです。

 

 

 

とすると、このAOL経由の売り上げは、Google自身の本当の実力ではないと考えられます。

 

 

 

そこで、Googleの本当の実力を測るためには、AOL経由のユーザを獲得するために使ったコスト、つまりAOLに支払った金額を引く必要がある、というのが、このTACの考え方です。

 

 

 

アメリカでは企業を評価するときに必ずこのTACが出てくるくらいに重要な要素と考えられていますし、インターネットビジネスにおいては、いかにこのTACをゼロに近づけるかというのが大きな課題になっています。

 

 

 

できるだけTACをゼロに近づけるというのは、どれだけユーザの方から勝手に集まってくるようにできるかということになります。これが、インターネットビジネスでは勝負のひとつになります。

 

 

 

ですから、Googleがインターネットで提供しているサービスは、ユーザに「勝手に集まってきてもらう」ためのものなのです。

 

 

 

ウェブ検索サービスも地図サービスもニュースサイトも辞書サービスも翻訳サービスも、もっと言えばメールサービスもカレンダー/スケジュール管理もそうです。さまざまな便利機能を提供することで、ユーザに集まってきてもらおうというのです。

 

 

 

ですから、これらのサービスが基本的に無料なのは当然のことでもあります。ここではできるだけ多くの人に来てもらうことが最大の目的なのであって、Googleはそのサービス自体をお金に換えたいわけではないからです。

 

 

 

 

 

Googleの検索エンジンが儲かる「仕組み」

さまざまなインターネット・サービスでユーザを集めたら、今度は彼らを企業と結び付けなければなりません。

 

 

 

集まったユーザはそれぞれに情報を求めているわけですが、彼らが欲しい情報と、ユーザを欲しがっている企業を適切に結びつけなければなりません。丸の内でコーヒーを飲みたいユーザと、家電量販店を結びつけても意味がないのです。

 

 

 

そのユーザを家電量販店は買ってくれません。家電量販店が欲しいのは新しいテレビを欲しがっている人で、丸の内でコーヒーを飲める店が知りたい人ではないのです。そういう人は、喫茶店なりカフェなりと結びつけなければいけません。

 

 

 

ユーザと企業とを正しく組み合わせる、マッチングの最適化が非常に重要になってくるのです。最適なマッチングを実現するためには、何よりもユーザが求めているものが何なのかを正しく把握しなければなりません。

 

 

 

これができなければ最適化のしようがないわけで、ある意味では最も重要な要素になりますが、Googleはこの点でも凄い強みを持っています。ユーザが何を求めているのかを、ユーザ自身に明確に言語化させてしまうのです。

 

 

 

つまり、Googleの検索窓に、知りたいと思っている情報をそのものズバリのキーワードとして入力させてしまうのです。検索窓に「コーヒー」と入力されれば、その人がコーヒーに興味を持っていることが明らかになります。

 

 

 

しかし、コーヒーを飲みたいのか、コーヒー豆が買いたいのか、あるいはコーヒーの産地について知りたいのかは、分かりません。

 

 

 

しかし「コーヒー 丸の内」ならば、コーヒー豆の産地のことを知りたいのではなく、コーヒーが飲める店を、しかも丸の内で探しているのだろうと推測できます。こんなに簡単に、かつ正確な情報を手に入れる方法は、他にはありません。

 

 

 

もちろんこれができるのは、求めている情報がインターネットのどこかにあるのかを探してくれる、最も優秀な検索エンジンをGoogleが持っているからです。

 

 

 

優れた検索エンジンがあるからこそ、ユーザは検索するときにGoogleを利用してくれるし、優秀な検索エンジンだからこそ、詳細なキーワードを入力してくれるのです。

 

 

 

昔は検索ボックスにキーワードを入れても正確な情報を返すことができなかったので、分類されたディレクトリからユーザに選択してもらっていました。「あなたの知りたいことは何ですか?次の10個の中から選んでください」というスタイルです。

 

 

 

選択肢の中からひとつを選ぶと、さらに「では、次に以下の10個の中から選んでください」と、一つずつ進んでいくものです。丸の内でコーヒーを飲みたかったら、

 

 

 

「グルメ」→「外食」→「喫茶店」→「東京都」→「千代田区」→「丸の内」

 

 

 

といったように順を追って絞りこんでいくことになります。このディレクトリを作ることはさほど難しくありません。

 

 

 

基本的にはどうやってタグを切るかという、単純な分類学の世界なので、これはここ、これはこっち、と機械的に振り分けていけば良いだけです。

 

 

 

それに対してGoogleの検索は、ひとつのキーワードが入ってきたときに、このキーワードに合致するページはここ、というのをアルゴリズムで自動的に処理しなければならないのですが、これを自動的に処理できるエンジンを作るのが、非常に難しかったのです。

 

 

 

それをGoogleの創始者であるラリー・ペイジとセルゲイ・プリンが、ページランク理論を発明することで実現しました。このページランク理論というのは簡単に言ってしまうと、

 

 

 

「あるキーワードについて、それを重要としているページからリンクされているページは重要である」

 

 

 

ということになります。

 

 

 

例えば「ビジネス」をキーワードに検索する場合、ビジネスについてたくさん書かれているページ(「ビジネスを重要としているページ」と定義できます)から参照されているページは重要であると規定します。

 

 

 

そして、これをいくつも抜き出していくと、複数のサイトから参照されているページが見つかります。そのページは特に重要度の高いページであると見なすことができます。

 

 

 

そうやって次々に重みづけていくと、キーワード「ビジネス」に合致するページを計算ではじき出せるのです。そして、このページランク理論のベースになっているのは実は学術論文と言われています。

 

 

 

学術論文というのは、他人の論文にたくさん引用されたものがいいのだという不思議な世界です。そこで他の論文から引用されているものを探すために使っていた論文検索の方法を、インターネットに応用したわけです。

 

 

 

現在ではページランク理論だけでなく、さらなる最適化が進められ、より精度の高い検索が出来るようになっています。

 

 

 

 

 

ユーザの気持ちを「キーワード」で言語化させる

ともあれ、それまではディレクトリ型の、とてもまどろっこしい段階を踏んでいた検索を、Googleの検索エンジンは、ユーザが知りたがっているものを直接入力するものに変えました。

 

 

 

ユーザの欲しがっている情報を、そのまま言語化させることに成功したのです。言い方を変えると、ユーザが求めているものは何かを明確にする、ユーザのインテンション(意図)を先鋭化することができたということです。

 

 

 

そして、ページランク理論によって、そのインテンション(意図)に沿った情報を正確にフィルタリングして提示できるようになった。それによって、ユーザと企業とを正しくマッチングさせることが可能になったというわけです。

 

 

 

フィルタリングということで言えば、検索だけでなく広告の世界でも同じことが行われています。私たちが見ているウェブ上のバナー広告も、一見無秩序に貼られているように思えますが、実は背後でいろいろな計算がなされています。

 

 

 

そのページを見ている人がどんな人で、何を求めているかを想定しなければ、効果的な広告にならないからです。

 

 

 

このページを見る人はどんな人なのかを想定した上で広告を載せることは、もちろんインターネット以前も行われていました。

 

 

 

例えば男性雑誌であれば読者の圧倒的大多数が男性だから男性用育毛剤の広告を載せよう、といったことです。これもユーザのインテンション(意図)を読み解いて、それに合致した広告をフィルタリングして提示していると言えます。

 

 

 

ただ、インターネットの場合はよりインテリジェントになっていて、男性が読むページであるということだけではなく、そのユーザのページの閲覧履歴なども見ていくのです。

 

 

 

いまこのユーザがいるのは男性がよく読むページだけれど、ここに来る前にはゴルフのページを見ている。とすると、この人は日頃からゴルフに行く人か、近々ゴルフに行く予定がある人だろうと考えられる。

 

 

 

だとすれば育毛剤の広告よりもゴルフ関連の広告を出したほうが見てくれる可能性が高いだろう、というものです。

 

 

 

これは行動ターゲティング広告といって、ユーザが複数のサイトでどういった行動をしているかに基づいた広告です。このフィルタリングが優秀で、マッチングが最適化されていれば、ユーザを見つけてくれることに対して、企業はお金を出してくれるのです。

 

 

 

 

 

巨大企業Googleを支える2つのプラットフォーム

ウェブ検索による情報提供はもちろんとても有効なのですが、一方で企業側としてはより直接的にユーザに働きかけたいと考えます。

 

 

 

ユーザが検索窓に「コーヒー 丸の内」と入力するのを待たずに、丸の内でコーヒーを飲もうと考えている人に対して、あらかじめ店の存在を知らせたい、という考え方です。

 

 

 

Googleという会社がさすがなのは、そのためのプラットフォームもちゃんと用意しているところです。AdSense(アドセンス)というサービスがそれです。これは、ウェブページのコンテンツに合わせて、関連する広告が自動的に配信・表示されるというものです。

 

 

 

ウェブページの運営者がこのAdSense(アドセンス)を利用すると、そのページの内容が解析されて、関連する広告が表示されるのです。

 

 

 

つまり、コンテンツの中に「コーヒー」だとか「丸の内」だとかのキーワードが含まれていると、丸の内のカフェの広告が自動的に表示されるという仕組みです。

 

 

 

「コーヒー」や「丸の内」といった単語がよく出てくるページをわざわざ見に来た人は、コーヒーが好きで、丸の内に行く機会が多いか、行きたいと思っている人である可能性が高い。ということは、丸の内のカフェの潜在的なユーザであると言えます。

 

 

 

そこで、先回りしてこのページに丸の内のカフェの広告を出して、店に誘導しようというわけです。

 

 

 

この広告をユーザがクリックすると、1クリックあたりいくら、というGoogleの売り上げになるのは普通のウェブ広告同様ですが、AdSense(アドセンス)ではその一部がサイト運営者にも報酬として渡ることになります。

 

 

 

サイト運営者にしてみれば、自分は何もしなくても、読者がクリックする可能性が高い(言い方を換えると、自分の収入につながる可能性の高い)広告が自動的に表示されるので、これはこれでとてもおいしいことです。

 

 

 

そこで競うようにAdSense(アドセンス)を利用するというわけです。

 

 

 

Googleは、検索エンジンというユーザ側が働きかけるプラットフォームと、AdSense(アドセンス)という企業側が働きかけるプラットフォームの両方を持つことになりました。このふたつのプラットフォームができてしまえば、あとは簡単です。

 

 

 

Googleは「ユーザが情報を手に入れるための空間」を作れば、それをそのまま換金化できてしまうのです。

 

 

 

例えば「Googleマップ」は「ユーザが情報を手に入れるための空間」です。ユーザに地図を開いて「どこに行きたい」と言わせれば、その場所にあるレジャー施設や飲食店の情報をたちどころに提供できる。

 

 

 

ユーザがアイコンをクリックしてくれれば、換金化の完了です。「Googleマップ」だけではありません。動画でも、ニュースでも何でもいいのです。

 

 

 

ユーザが集まってきて、自分が何を知りたいのか、どんなものに興味を持っているのかを表明できる空間、言い換えると、ユーザのインテンション(意図)を読み取れる空間があれば、それがそのままビジネスの場になるというわけです。

 

 

 

GoogleよりFacebook(フェイスブック)の換金化が比較的難しいのは、ユーザのインテンション(意図)が読み取りにくいことに起因しています。Facebook(フェイスブック)は友達の情報を求めてくるところですから、自分の欲しいものを明示的に表明することはありません。

 

 

 

そのため広告を表示してもそれがユーザのインテンション(意図)と合致するとは限らないし、実際に合致する可能性は低いでしょう。だからなかなか広告をクリックしてもらえない。広告をクリックしてもらえなければ、収入にもならないのです。つまり、

 

 

1. ユーザのインテンション(意図)を先鋭化させて正しく把握する

 

2. そして、そのインテンション(意図)に基づいて最適なものを提示する

 

 

 

という二つの仕組みがきちんと回ることが、インターネットのビジネスでは重要なことなのです。

 

 

 

ここまではGoogleを例にしてきましたが、これはGoogle以外のAmazonや価格コムのようなサイトでも、原理的には同じです。情報を売るのか、リアルな品物を売るのかという違いはありますが、基本的な構造は変わりません

 

 

 

Googleの場合、扱っているのは情報ですが、お金はユーザにアプローチしたいと考えている企業からもらいます。これは広告ビジネスです。ニュースサイトの購読料のように情報をユーザに買ってもらう場合は、課金ビジネスになります。

 

 

 

もちろん、ニュースのような情報ではなく、リアルな商品、品物を売ることもできます。このあたりが、インターネットビジネス(オンラインビジネス)の基本です。

 

 

 

 

 

Googleがより多くのユーザを集められる理由

このように、Googleは非常にインターネットビジネス(オンラインビジネス)をうまく回している会社なのですが、それでもここまで圧倒的な存在になったのは何故なのでしょうか。ひとつはとても単純な問題です。

 

 

 

すでに述べたように、インターネットというのは、いかに多くのユーザを集めるかがひとつの勝負になります。例えば街で電化製品を買おうとしたら、どこへ行きますか?多くの人は、ヤマダ電機などの大手家電量販店の名前を挙げるでしょう。

 

 

 

ネットならば価格comへアクセスし実勢価格を調べ、Amazonや楽天でも比較して購入するかもしれません。あるいは、美味しいレストランを探そうと思ったら、一番始めは食べログにアクセスすると思います。

 

 

 

こうした何のヒントや手がかりもなく、ブランド名などを思い浮かべることを純粋想起(じゅんすいそうき)といいますが、この純粋想起を取ってしまうのが最強なんです。まず頭に思い浮かんだ場所に行く。だから純粋想起を取ったサイトに人は集まるのです。

 

 

 

純粋想起を取るために重要な要素のひとつに、最初にブランドを確立することがあります。多くの人は、最初にブランドを構築した人を評価する傾向にあると思うのです。

 

 

 

例えば価格comと同様のサイトにECナビというサイトがありますが、どうしても人はECナビより価格comに向かうわけです。

 

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Googleも、この純粋想起を取りました。ウェブ検索といえば「Google検索」、地図なら「Googleマップ」、メールサービスなら「Gmail」、動画なら「YouTube」と、ほとんどの分野でGoogleは純粋想起を獲得しました。だから人が集まっているのです。

 

 

 

そしてもうひとつが収穫逓増(しゅうかくていぞう)の法則です。収穫逓増(しゅうかくていぞう)とは聞き慣れない言葉だと思いますが、これは生産規模が大きくなると生産がより効率的になり、収穫は規模の増大分よりも大きくなるというものです。

 

 

 

仮に生産規模が2倍になったとすると、生産の効率化によって収穫は2倍にとどまらず、3倍4倍と加速度的に増えていくという現象、これが収穫逓増(しゅうかくていぞう)です。

 

 

 

分かりやすく言うなら「にわとりたまごの法則」なんですが、これについてちょっと詳しく説明します。このことを考えるときに一番分かりやすいのが、ネットオークションです。オークションは日本国内ではヤフオク!がダントツに強い。圧倒的です。

 

 

 

なぜなら、ユーザは一番出品者が多いオークションサイトに行くのが、最も確実な選択になります。出品者が多いということは商品も多いわけで、それだけ自分の希望にあった商品を見つけられる可能性が高いからです。

 

 

 

一方の出品者は、ユーザがたくさん集まっているサイトに出品するのが一番有効なのです。ユーザが多く集まっているということは、自分が出品する商品を欲しい人がいる可能性が高い。

 

 

 

欲しい人が大勢いれば、競り合ってくれて高値で落札してもらえるかもしれないからです。とすると、ある閾値(いきち)を超えると出品者がユーザを呼び、ユーザが出品者を呼ぶというサイクルに入って、どんどんと人と商品が集まり、さらに強くなっていくというわけです。

 

 

 

後発のオークションサイトもありますが、出品者にとってはお客さんのいないところに出品してもしょうがない、ユーザにとってはヤフオク!に行けば商品があるのだから別のサイトに行く意味がないということになるのです。

 

 

 

この、強いところがますます強くなっていくのが、収穫逓増(しゅうかくていぞう)の法則と呼ばれるものです。

 

 

 

インターネットビジネス(オンラインビジネス)は、情報を求めるものと求められるもののマッチングビジネスですから、情報を求めている人が多い所に情報を出す人が集まる。そして、情報を出す人の多い所に、情報を求める人が集まることになります。

 

 

 

必然的に、ネットワークビジネスは収穫逓増(しゅうかくていぞう)の法則になりやすい。とすると、最初に閾値(いきち)を超えたところ、つまりティッピングポイントを超えたところが圧倒的に強くなります

 

 

 

そして現実のインターネットビジネスにおいて、最初にティッピングポイントを超えたのがGoogleだったということになります。

 

 

 

 

 

「Evernote(エバーノート)」や「Dropbox(ドロップボックス)」が無料でサービスを提供している理由

インターネットビジネス(オンラインビジネス)でお金を稼ぐ方法のひとつに、ユーザにコンテンツを買ってもらうコンテンツビジネス課金ビジネスがあります。

 

 

 

情報を欲しがっているユーザにお金を出して買ってもらうというのは、一番シンプルで手っ取り早いスタイルなのですが、実際にはあまりうまくいっていないのが現状です。ユーザにお金を出してもらうビジネスで、成功しているものがないわけではありません。

 

 

 

しかしその多くは、基本的には無料サービス(フリー)で、一部の付加価値サービス、強化機能サービスに対して課金する(プレミアム)、いわゆるフリーミアム(「フリー」+「プレミアム」)の形態を取ったものです。

 

 

 

その代表格が、Evernote(エバーノート)やDropbox(ドロップボックス)で、例えばEvernote(エバーノート)では、ノートや写真、音声などを保存しておけるのですが、アップロード容量やノートひとつの最大容量などに制限がついています。

 

 

 

フリーのスタンダードアカウントでは、月間のアップロード容量は60MB、ノートひとつの最大容量は25MBなどと決まっています。

 

 

 

ほとんどのユーザはこの制限内の利用で用が足りるでしょうが、もっと大きなサイズのノートを保存したいのであれば、有料のプレミアムアカウントにすることで、月間1GBのアップロード容量、最大ノートサイズ100MBまで機能を強化できる。これがフリーミアムです。

 

 

 

ではなぜ、こうしたビジネス形態を採っているのか。Evernote(エバーノート)のように情報を保存するサービスは、以前はとてもコストのかかるものでした。ところがハードディスクが低価格化して、現在では1TB(テラバイト)で1万円を切るくらいになっている。

 

 

 

この状況では、100万人、1000万人という数のユーザであっても、少しくらいのノートや写真を貯めこんだところで、使うディスク容量はたかがしれています。Evernote(エバーノート)としては大したコストはかからない。

 

 

 

それならば基本は無料サービスでたくさんユーザを集めてしまえば、そのうちの1%であっても付加価値サービスにお金を出してくれれば、充分ビジネスとして成り立ってしまいます。これがフリーミアムの考え方です。

 

 

 

課金ビジネスがあまり上手くいっていないのに対して、このフリーミアムというビジネスモデルが一定の成功を収めていることもあって、フリーでなければお客はこない、インターネットはフリーでなければならないという考え方があります。

 

 

 

けれど私は逆だと考えています。課金ビジネスが上手くいっていないのは、集金システムが整っていないためです。利用者がお金を払うための環境ができていないから、本来課金すべきものであってもフリーにせざるを得ないのです。

 

 

 

 

 

「お金を払う」行為にもコスト(費用)はかかっている

高速道路を走っていて渋滞につかまったとき、この渋滞がどこまで続いているのか、どれくらいで抜けられるのかを即座に知ることができれば、とても便利です。

 

 

 

仮にこれが月額300円の有料サービスであっても、300円くらいなら払ってもいいと思う人は、少なくないだろうと思います。

 

 

 

ただ、有料ユーザに登録するためには、クレジットカードを取り出して、カードナンバーやら有効期限やらセキュリティコードやらを入力して・・・という手間がかかる。

 

 

 

大体お金を出しても渋滞情報を知りたいと思うのは、実際に渋滞に引っかかっているときで、いくら渋滞中で車が動かないにしても、そんな面倒なことはしていられないですよね。だから誰も払わない。払う気がないのではなくて、手続きが嫌なんです。

 

 

 

ユーザがお金を払うかどうかは、情報の対価だけでなくて、その情報を調べる時間や支払いにかかる時間、手間、そういったトータルコストに見合うかどうかで決まります。

 

 

 

情報そのもののコスト、その情報を探すための探索コスト、情報を手に入れるために必要なコスト。この三つを合わせたものが、価格に見合うかどうかです。探索コストを分かりやすい例で言うと、iTunesを挙げることができます。

 

 

 

iTunesで購入しなくても、音楽ファイルを手に入れることはできます。不正ダウンロードやWinnyならタダで手に入ります。

 

 

 

ほとんどの人は、音楽ファイルをタダで手に入れる手段を知っていながら、iTunesでお金を出して買います(※もちろんこれは不正なことには与しないという倫理観の問題でもあるのですが、ここではそれはちょっと脇に置いて、コストについてだけ考えてみます)。

 

 

 

これは一体どういうことかと言うと、Winnyで10分、20分かけて探すのと、iTunesで10秒で探して視聴して100円払うのとを比べた時にどちらが良いか、ということです。

 

 

 

大多数の人は、Winnyで探すような面倒なことをするよりも、100円払った方が得だと考えるのです。もちろん、100円払うよりネット上で1時間探した方がいい、と考える人もいます。探索コストは知覚コストなので、人によって違うんですね。

 

 

 

例えば時給800円でバイトをしている人が100円の曲を探すとき、それが7.5分で見つかるのならタダで手に入れる方が得だと感じられるかもしれません。

 

 

 

その人が何らかの作業をするときの報酬が時給800円、すなわち7.5分あたり100円という値段が基準になるので、7.5分以内の作業であれば100円以下のコストで済んだ、という感覚になるわけです。

 

 

 

逆にそれ以上の時間がかかるのなら、その人にとっての100円分以上の時間を費やすわけですから、損になりますよというわけです。

 

 

 

もし、時間の知覚コストが0円に近い、いくら時間を使っても構わないと思っている人であれば、1時間かけてもWinnyで探そうとするでしょう。しかし、いずれにしても探索コストは不安定なもので、実際にどのくらいかかるかは分かりません。

 

 

 

すぐ見つかると思って始めたものの、全然見つからずにすごく時間がかかってしまった、ということが往々にして起きるわけです。そうしたものに対しては、時間をかけて探すよりもすぐに手に入るものの方が良いので、大抵の人は100円払うことを選ぶのです。

 

 

 

手に入れるためのコストについては、かつて「100円ライター理論」と言っていた例を挙げるのがいいでしょう。

 

 

 

ある人がタバコを吸いたくなったけれど、ライターを家に置いてきてしまった。そのライターがどんなに高級なZIPPOのライターであったとしても、近くのコンビニで100円ライターが買えるのなら、わざわざ家まで取りに帰ることはしません。

 

 

 

家まで取りに帰るより、すぐそこで100円ライターを買った方がはるかにコストがかからないからです。課金ビジネスが成立するかどうかを左右する問題は、この探索コスト、支払いにかかるコストなどを含めたトータルコストが見合ったものになるかどうか、です。

 

 

 

そして現状では、支払いのためのコストが高すぎる、だからユーザはお金を払ってくれないのです。手軽に簡単に支払いができるシステムが整備されれば、そして正確に情報が手に入るのであれば、人はお金を払います。

 

 

 

幸いスマートフォン、というよりiOSとAndroidがあるおかげで、少額課金の可能なプラットフォームができつつあります。プラットフォームができれば、課金ビジネスの市場がどんどん生まれてくるはずです。その良い例が、他でもない日本なんです。

 

 

 

後ほど改めて触れることになりますが、日本の携帯電話は各キャリアが4桁の暗証番号を入れるだけで課金できるという体制を作ったおかげで、世界一のコンテンツ市場を生み出しています。

 

 

 

日本の携帯コンテンツの市場規模はピークの2011年には6,500億円を超えました。これはiPhoneのアプリマーケットが全世界で売り上げた金額を遥かに上回っています。

 

 

 

 

 

人は「快感」にお金を払う

コンテンツ課金の代表的な存在ともいえるのが、ゲームコンテンツです。

 

 

 

ゲームコンテンツは商品の性格として、前の例で挙げたEvernote(エバーノート)やDropbox(ドロップボックス)、それから情報を売るタイプのビジネスとは違っていて、そのためのお金の取り方も違っています。

 

 

 

いわば快感に対してお金を払ってもらうというビジネスで、ゲームをすること、ゲームを進めることの快感をどういう形でユーザに提供し、その対価としてお金を払ってもらうかが問題になってきます。

 

 

 

そのゲームコンテンツの中でも、GREE(グリー)やモバゲーなどのソーシャルゲームと、最近のスマートフォンのゲームとはお金の取り方がまた違っているのですが、少しその辺りを詳しく掘り下げて見ましょう。

 

 

 

実は「怪盗ロワイヤル」から始まったソーシャルゲームにしても、「パズル&ドラゴンズ」などのスマートフォンゲームにしても、原型は「ポケットモンスター」と言われています。ゲームとしての基本的な作り方は「ポケモン」から何も変わっていないのです。

3(600×350)

怪盗ロワイヤル

4(600×350)

パズル&ドラゴンズ

 

 

 

 

ポケモンに主人公の「サトシ」の名でも登場しているゲームクリエイターの田尻智(たじりさとし)さんは、ゲームの主要な要素として「交換」「収集」「育成」「対戦」を挙げています。これらの要素が子どもを含めて、人をゲームにハマらせるのだというんですね。

 

 

 

ポケモンを友達と交換する、新しいポケモンを集める、友達のポケモンと対戦させる。そこに面白さを見出しているわけです。

 

 

 

実はこの「交換」「収集」「対戦」は、昔の遊びからあった要素で、メンコ遊びやベーゴマにしても、友達と交換したり、新しいものを集めたり、そして戦ったりという遊びです。

 

 

 

田尻さんが凄いのは、それをデジタルにフォーカスして、コンピュータゲームの世界を変えてしまったところです。

 

 

 

それで、ソーシャルゲームというのは、その人がついついハマってしまう「交換」「収集」「育成」「対戦」のそれぞれの部分で、ネガティブな言い方になりますけれども、お金を掠(かす)め取ろうというものなんです。一番象徴的なのが「怪盗ロワイヤル」です。

 

 

 

このゲームは6種類とか8種類のアイテムを集めて、それをコンプリートするとレアなアイテムが手に入るというものですが、その自分が必死に集めたアイテムが他人に盗まれるようになっている。ゲームのストーリーとして、盗まれることになっているのです。

 

 

 

そもそもの設計が盗まれるようになっているわけですから、確率論として、アイテムが4つ、5つ集まるところで、まあ盗まれてしまうことになります。それを盗まれないように守るアイテムも用意されていて、そのアイテムを買うことで、盗まれるのを防ぎましょうということになっている。

 

 

 

「収集」段階でお金を取る仕組みです。さらに「対戦」の場面では、ランキングという形で、ユーザそれぞれの強さや順位が見えてくるようになっているんです。

 

 

 

そんなふうに分かりやすく強さが見えると、人情としてもっと強くなりたい、順位を上げたいと思うようになります。もっと強くなるために、お金を払う。他人との競い合いの中でお金を払っていくことになるのです。

 

 

 

この構造は言ってみれば際限のない消耗戦なんです。自分が強くなろうとしてお金を使うと、それに対応するために他人もお金を使ってもっと強くしてくる。それよりもさらに強くするために、またお金を使う。

 

 

 

他人がお金を使ったら、こちらも使わなければならないということになっているわけです。つまり一度払ってしまうと、次から次に払い続けることになってしまう。イソップ童話「北風と太陽」になぞらえるなら、北風的な課金方法といえるのです。

 

 

 

 

 

人は「サンクコスト(埋没費用)」にお金を払う

一方で「パズル&ドラゴンズ」がいちばん分かりやすいのですが、「アングリーバード」はパズルで、面をクリアしていくタイプのゲームです。

 

 

 

ゲームの最初のころに出てくる面は比較的簡単で容易にクリアできるのですが、5面に1回くらいちょっと難しい面が出てきます。難しいのでクリアできないことがあるんですが、それまで順調にクリアしてきたところで、クリアできない面があると悔しいですね。

 

 

 

そこでちょっとお金を払うと途中までやってきた続きから始められる。コンティニューできる。あるいは強い鳥が買えて、難しい面もクリアできるようになる。

 

 

 

もちろんお金を払わなくても、時間をかけて上手になればクリアできて次に進めるんだけれど、あとちょっとお金を出せば今すぐ乗り越えられますよ、というタイプのゲームです。これは何かというとサンクコスト(埋没費用)です。

 

 

 

日本語では埋没費用などと言いますが、回収できない費用のことで、この場合はゲームを進めるためにこれまで使ってきた時間、取り返しのつかない時間です。

 

 

 

例えば一人の女性と仲良く暮らしていたけれど、ある時いざこざが起きたとします。本質的にはその人は損切りして、次の人に移った方が投資としては有効なのだけれど、今までその人にかけてきた時間を考えると踏ん切りがつかない事がある。

 

 

 

これもサンクコスト(埋没費用)です。

 

 

 

スマホで空き時間にだらだらとゲームが出来るようになると、そのだらだらしていた時間もサンクコストと見なすようになってしまう。だらだらと使っていた時間が、さも貴重なように見えてしまうんです。

 

 

 

ここでゲームオーバーになってしまうと、今までゲームに使った時間が無駄になってしまう。ここでちょっとお金を払えばゲームが続行できて、これまで使った時間が無駄にならない。というので、お金を払うことになるわけです。

 

 

 

このやり方が「怪盗ロワイヤル」の北風的スタイルと決定的に違うのは、北風型のゲームはやがてお客さんが離れていってしまうけれど、こちらは離れていかないということです。

 

 

 

「パズドラ」の場合、継続率(月を越えて利用を継続するユーザの割合)は8割以上にもなります。それだけ長い期間、ゲームを楽しむユーザが多いということです。

 

 

 

課金率の比較でも、北風型ゲームでは一般的に2割以下で1割払ってくれれば上等、といったところです。その1割のさらに10分の1の人が万単位のお金をつぎ込んでくれる、そこで儲けるというのが、北風型のゲームでした。

 

 

 

対して「パズドラ」の課金率は3割を超えるということで北風型ゲームよりも高いのですが、北風型との違いは一度払ったらずっと払い続けるという性格のものではないのです。

 

 

 

無料で遊ぼうと思えばずっと遊んでいられるのですが、ある時「今日は急いでいるから、ここだけお金を使おう」と言って払ってくれる人がいる。1年間ずっと無料で遊んでいるかもしれないけれど、ある日突然300円払ってくれるかもしれない、というビジネスなのです。

 

 

 

北風型と比較すると、より健全なやり方であると言えます。北風型のゲームがあまりよくないのは、子どもが大金をつぎ込んでしまうことが社会問題化しましたけれど、それだけではなくて、ある程度時間が経つとお客さんが離れていってしまうのです。

 

 

 

これは商売のやり方としては、あまり上手なものではありません。最近では「パズドラ」が成功したこともあり、ソーシャルゲーム各社も北風型ゲームから徐々に健全な形へ進化しています。

 

 

 

また、わずか数年で4,000億円を超える市場規模へと成長したソーシャルゲーム業界にも業界団体であるソーシャルゲーム協会ができ、一定のガイドラインができつつあるなど、急速に市場環境が整ってきています。

 

 

 

ソーシャルゲームに限らず、インターネットビジネス(オンラインビジネス)は、そのあまりの進化の早さから、一時的に過剰なやり方が生まれてしまうことがあります。

 

 

 

製品やサービスがインターネットに繋がっていることで、ユーザからのフィードバックがすぐにわかり、短期的な収益に最適化が図られてしまうことがあるからです。が、同じようにお客さんが離れていってしまったことに、いち早く気づくこともできます。

 

 

 

速いフィードバックや改善のサイクルを活かして、接続可能なビジネスへと進化させ発展させていくことができることも、インターネットビジネス(オンラインビジネス)が持つ最大の特性なのです。