不況、増税、老後破産。資本主義で”死なない”為に知らなければいけない経済のコト | なぜテレビの値段は下がり続けるのか?~剰余価値の期限~

資本主義を生き抜く為に知らなければいけない”経済”のコト




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特別剰余価値には、賞味期限がある

 

特別剰余価値は、他社よりも効率良く生産すれば生み出せます。しかし裏を返すと、他の企業にない有利な条件が無ければ生み出せないということです。

資本主義経済においては、ほぼすべての企業がその有利な生産技術を目指して日々研究・競争しているわけです。ですから、周りの企業も同じような技術を開発したり、他社の成功事例はどんどん取り入れていきます。特許や、よほどの独自技術を持っていない限り、A社の技術はやがてはB社、C社にも広がり、社会全体が同じ生産性になっていくのです。

資本主義経済では、このような競争は必然です。各社が「より多くの利益を!」と考えているため、この流れは止まりません。ここでは『資本主義』のエッセンスの三つ目、「剰余価値」がやがて減っていくことのジレンマと、それによってますます私たちの生活がしんどくなる構造を明らかにしていきます。

資本主義経済では、企業は絶えず自分の利益を増やそうと努力しています。だから、この特別剰余価値は、絶えずいろいろな分野で発生しています。そして、発生した特別剰余価値は、技術やノウハウがやがて世間一般に広まるにつれてなくなり、もはや「特別」ではなくなってしまう。

特別ではなくなるというのは、それが「社会平均」になるということです。他社よりも多く利益を得ようと切磋琢磨してやっとたどり着いた水準が、「当たり前の水準」になってしまうということです。当然、すでにそこではより生産性が向上していますので、少ない努力・時間で商品を生産できるようになっています。つまり、生産された商品の価値は下がっているのです

ある商品Aの生産コストが下がると、その商品を材料にしている商品Bの「価値」も低下していくことになります。商品の価値は、その商品を構成する原材料の価値の合計だということを思い出してください。

資本主義経済において、何もしなくても、商品はどんどん価値が下がっていくということなのです。

特定の商品だけではありません。資本主義の構造が「技術革新」&「コスト削減」なので、世の中全体としてこのような価値低下が起こるのです。わかりやすいのはテレビなどの電化製品です。数年前に最新機種として10~20万円ほどで販売されていたモデルは、いまや1万円前後の値段しかつかないでしょう。それくらい「価値」が低下したということです。その商品の用途や、消費者に与えるメリットが変わらなくても、競争により原材料の値段が下がれば、自分がつくっている商品の価値も下がってしまうのです。

アップルが2007年にiPhoneを発売したときには、大変なインパクトと感動がありました。しかし、その技術はすぐに世の中に広く知れ渡り、今では「当たり前の商品」になりました。これから数年たつと、スマホが数千円に成り下がっていることも容易に想像がつきます。

値段が下がったのは、その商品を見飽きたからではなく、その商品を使わなくなったからでもなく、その商品が世の中に普及したからでもありません。「その商品をつくるのに時間や労力などのコストがかからなくなったから」です。「商品の価値が低下した」という点が重要なのです。

世の中は「企業の利益を増やすための効率化」が、「企業の利益を減らしていく構造」になっている

資本主義経済の中で、各企業は常に効率を上げようと努力しています。単に労働者に発破をかけるだけでなく、生産効率を上げる機械を導入したり、業務効率を上げるソフトを導入したり・・・。また、外部業者に依頼して自社のコストを下げたり、シェアオフィスに引っ越して家具を引き下げることも、「業務効率化」に該当します。

効率を上げようとするのは、経営者にとっては当たり前のことですし、逆に効率を上げなくてもいいと思っている経営者は第一線で活躍し続けることは難しいかもしれません。ただし、この「経営者としての当然の行動」が、逆に企業を苦しめていくことになります。つまり、短期的には企業にとっては必要で、企業にプラスになる行動が、長期的には企業の利益を減らしていく要因になっているのです。なぜでしょう?

それは、商品の「価値」を考えることで、明らかになります。生産効率を上げれば、たしかに生産量は増えます。しかも飛躍的に増えるでしょう。ただ、時間効率が上がったら「簡単につくれる商品」に成り下がってしまいます。「機械が導入されたから、かなり楽になったよね?」「かなり生産効率が上がったから、短時間でたくさん生産できるようになったよね?」そう思われます。

そして、「だから、その商品は安くていいよね」と思われるのです。『資本主義』の中では、機械が導入され、生産効率が高まると、商品の「価値」が下がるとみなされます。効率的に生産できるということは、少ない労力で生産できるということです。それはつまり価値が下がる」ということです。そして、価値が下がれば値段が下がります。生産効率を高める行為が、商品の値段を下げてしまう結果になるのです。

もっと良い性能を、もっと効率よく生産しようと各社がしのぎを削った結果、「簡単に生産できる技術」が普及しました。簡単に生産できる商品は、その商品をつくるためにかかるコストが減ります。つまり「価値」が下がります。生産性が上がるということは、より多くの商品(価値)を生み出すことができ、生活が良くなることを意味します。ところが同時に、「商品を簡単に生産することができるようになる」ため、商品の価値が下がることになります。ということは、商品の価値も下がることになります。だから値段が下がるのです。生産技術が普及したことで、短期間に厳しい値崩れを引き起こしてしまうのです。

これはつまり、技術が普及したことで商品がコモディティ(均質)になってしまったということでもあります。

イノベーションは労働の生産性を高めます。剰余価値を増やします。短期的には、イノベーションが起これば、製造コストを低くできたり、アップル社のように新しい価格帯の商品を発売することができます。いずれにしても、企業の利益は増えますし、そのためにイノベーションを目指すのです。ですが、イノベーションが起こると、その後、遅かれ早かれ、その技術が普及します。そして、確実に商品の値段が下がり、コモディティ(均質)に成り下がってしまうのです。

他にも同じ例があります。たとえば、あなたがコンビニ等でもよく見かける「本」です。

グーテンベルクが活版印刷機を発明し、活字本をつくることが可能になりました。とはいえ、印刷や製本の過程はかなり手作業が多く、アナログでした。そのため、本はかなり高価なものでした。

しかし今は、ほぼすべての工程を機械が行います。機械がデータを読み込み、機械が印刷し、機械が紙を裁断して、機械が製本します。これにより、その気になれば1万冊の本を3日でつくることもできるようになりました。生産効率は飛躍的に拡大したのです。

しかし、一方で「本の値段」は安くなりました。かつて、勝海舟が“蘭学”を学ぶために買おうとしたオランダ語の辞書は、現在の値段で300万円だともいわれています。現在、オランダ語の辞書は1万円以下で買うことができます。オランダ語も含めた32カ国語の辞書が入った電子辞書は、2万円もしません。辞書としての機能は変わりません(むしろ、現代の辞書の方がおそらく優れているでしょう)。しかし、値段が100分の1以下です。簡単に生産できるようになったため、値段が下がったわけです。

当初は、機械を導入しても、商品の値が下がりません。一部にだけ新技術・新設備が導入されても、社会全体に広まるまでは、相場は変わりません。そのため、しばらくの間は、「以前の値段でたくさん生産できる」という時期が続きます。この間は、企業にとって「おいしい時期」ですね。

ですが、やがて企業同士が競争していくうちに、「値下げして集客しよう」と考える企業が出てきます。もしかしたら、すぐに出てくるかもしれません。その後は、価値が下がった分だけ、安く売らなければいけなくなります。これが大きな矛盾なのです。

機械化が「コピー」を量産する

かつて半導体は、日本の「お家芸」でした。ただ、今では韓国メーカーに押されています。これは、日本のノウハウがコピーされたからです。1980年代後半、アメリカと貿易摩擦が起き、日本からの輸出を減らさなければいけなくなったとき、日本は韓国に製造方法を伝え、「韓国経由」でアメリカに輸出するという作戦をとりました。これで当座をしのぐことができましたが、その代償として、製造ノウハウが韓国に流出してしまう結果となったのです。

なぜ日本のお家芸だった半導体を、韓国がいとも簡単にマネできたかというと、製造ノウハウが機械化されていたからです。アナログ商品や、いわゆる職人芸のモノづくりの場合、言葉にできないノウハウや「身体で習得する」部分が多いです。単にやり方だけを教えてもらっても、簡単にマネすることはできません。

しかし、製造工程が機械化されていれば、「製造プログラム」をコピーすればそれで終わりです。生産に必要な設備を導入し、製造プログラムのソフトを入れれば、それで完全に同じものがつくれてしまいます。画期的な生産方法や性能を格段に上げる技術を開発しても、それは簡単にコピーできてしまいます。これが機械化のもたらす大きな「弊害」のひとつなのです。

製造ノウハウが機械化されると、その商品を生産するノウハウが簡単にコピーできるようになります。つまり、マネしやすくなるということです。マネしやすくなれば、マネされます。マネされれば、業界に広まってしまい、もはや自分だけのノウハウではなくなります。

もちろん、自社の技術を意図的に流出させることはないでしょう。その製品のすべてを自社で開発している企業は少ないです。取引先から、部品を買っていたり、生産設備を買っていたりします。その取引先は、あなたの会社だけでなく、B社、C社にも提案をしてるはずですから、結果的に、みんなが同じような技術を使えるようになるのです。

そして、みんなが同じように商品をつくれるようになれば、もはやその商品を高く売ることは難しくなります。「コモディティ(均質)」に成り下がってしまうのです。繰り返しになりますが、これは生産性を高めて利益を増やそう、ライバルに差をつけて生き残ろうと企業が努力した結果です。こういう努力をすることは資本主義経済において「当然」のことです。その「当然の努力」が、やがては自社の商品をコモディティ化し、値崩れを引き起こすのです。

企業の利益を増やすための「機械化(効率化)」が、剰余価値を減らしたいく

企業は利益を追求する過程で「効率化」「機械化」をすることで、自分の首を絞めています。資本主義の「罠」とも言えます。そして、「機械化」には、もうひとつ別の罠があります。単なる効率化と違い、「職場から労働者を減らす」という側面があるのです。

労働者を減らしてしまうことは、企業にとって思わぬデメリットを引き起こします。企業の利益を増やそうと機械化し、労働者を減らすことが、逆に企業の利益を減らしていくことになるのです。

企業が商品を生産して利益を生み出せるのは、「労働者にお給料以上に働いてもらうから」でした。労働者が自分のお給料以上の付加価値を生み出し、それを企業が利益にしているのです。ということは、労働者を雇わなければ、企業は利益を出せないということになります。

いくら良い材料を使って商品を生産しても、その材料の価値が膨れ上がるわけではありません。1万円の材料を使ったら、そのまま商品の価値が1万円分増えるだけです。いくら良い機械設備を使って生産しても、だからといって、商品の価値が膨れ上がるわけではありません。価値が増えるのは、生産する過程で、労働者が付加価値を生み出すからです。そのため、労働者を雇わなければ、剰余価値(付加価値)が生み出されません。

しかし、実社会を見渡すと、大半の企業が機械化を目指していることに気づきます。現場に機械を導入して、できるだけ効率的に仕事を進められるようにしているのです。機械を導入し、現場が機械化されれば、生産量は増えます。しかし、機械化されれば、「商品ひとつあたりの剰余価値」がどんどん減っていきます。その結果、同じ商品から得られる利益が、どんどん減っていくのです。つまり、利益率が低下していくのです。

具体的な例で説明しましょう。ある企業が100万円を使ってビジネスを拡大します。この100万円をどう使うか、どのくらい設備投資(機械を増やす)に使い、どれくらい人件費(労働者を増やす)にあてるか、いろいろパターンがあります。労働者が生み出す剰余価値を自分のお給料と同額(つまり、自分のお給料の倍の価値を生み出す)だとします。そのときの利益率を計算してみます。

ケース1:30万円で機械設備を導入し、70万円で労働者を雇う(付加価値も70万円)

(利益率)=70万円(付加価値)/「30万円(機械)+70万円(労働者)」=70/100=70

ケース2:40万円で機械設備を導入し、60万円で労働者を雇う(付加価値も60万円)

(利益率)=60万円(付加価値)/「40万円(機械)+60万円(労働者)」=60/100=60

ケース3:50万円で機械設備を導入し、50万円で労働者を雇う(付加価値も50万円)

(利益率)=50万円(付加価値)/「50万円(機械)+50万円(労働者)」=50/100=50

付加価値を生み出せるのは、労働者だけです。そのため、労働者の数が減れば、剰余価値(付加価値)も減っていくのは当然のことです。

始めは利益が増えるため、正しい方法と錯覚してしまう

ただ、ここで厄介なのは、機械設備を導入すると労働生産性が上がり、「原則」が隠れてしまうということです。当初は企業の利益が増えるのです。そしてそれにより「労働者が減れば付加価値が減っていく」という原則が隠れてしまう、ということです。

経営者は利益を増やすために機械設備を導入します。機械設備を導入したら利益がどうなるかも、しっかりと試算してから導入するでしょう。そして「利益が増える」ということを確認してから決定するはずです。当初は利益が増えるのです。ですが、考えなければいけないことがあります。それは、「そのイノベーションは、やがて世の中に普及してしまう」ということです。

となると、業界全体で生産効率が上がり、生産量が増え、生産物の価値が下がっていくことになります。イノベーションを起こし、生産量を増やせたとしても、それは短期的なカンフル剤にしかならず、長期的には商品を簡単に生産できるようにし、商品の価値を引き下げる効果を持つのです。つまり、イノベーションが進めば進むほど、経験が成熟すればするほど、利益率が下がっていく傾向にあるのです。言い方を変えると、「薄利多売ビジネス」に陥っていくのです。これが資本主義経済の大きな自己矛盾です。

「分業化」を進めると、加速度的に生産効率が上がっていく

企業が利益を求め、効率化を進めていくと、長期的には自分たちの首を絞めることになっています。結局突き詰めると、ある要素が関連しています。資本主義の理論にしたがって考えると、キーワードは「分業」です。生産効率・業務効率を上げるためには、分業が不可欠です。そして分業が浸透していくにつれて、自分の首が絞まっていくのです。

かつてイギリスの経済学者アダム・スミスは『国富論』の中で分業をして工程を分ければ、飛躍的に生産性が高まるということを指摘しました。ピン工場の作業を例に「各工程を分担して行えば、一日に4,800本のピンがつくれる。しかし、全行程をひとりでやろうとしたら、一日に1本もつくれないだろう」と言っています。それだけ分業の威力は強いものなのです。なぜ分業がそこまで威力があるのか?そして、なぜその威力があるものが、やがては企業の首を絞めるのか?

生産性が飛躍的に向上する背景には、仕事現場が機械化していることが不可欠です。仕事の現場が機械化していなければ、生産性はさほど上がりません。ですが、「ならば機械化すればいい」と言っても、叶いません。現場が機械化されるには、その仕事を機械化できなければいけません。つまり、それくらい仕事の工程が簡単なものになっていなければいけないのです。

たとえば、飲食店の仕事は、あまり機械化(自動化)が進んでいません。それはお客さんを席まで案内し、注文を聞いて、料理(商品)をつくり、それをお客さんのところに持っていくという仕事が機械化できないからです。二足歩行ロボットが生まれても、飲食業の仕事をすべて機械で行うことはまだまだ難しいでしょう。だから機械化されないのです。

しかし、なぜ機械化されないのでしょうか?それは、「分業」が行われていないからです。ここで考えたいのは、「なぜ分業すると、飛躍的に生産性が高まるか?」ということです。それは、ひとことで言うと、各作業が圧倒的に簡単になり、圧倒的に早く処理できるようになるからです。

1から10までの仕事をひとりでやる場合、頭を切り替えたり、場所を移動しなければいけません。また次の工程を考えながら仕事をしなければいけません。それを「1」をやる人、「2」をやる人・・・と分ければ、自分は目の前のひとつの仕事に集中できます。そしてその限られた仕事を日々繰り返せば、圧倒的に早く仕事をこなせるようになるのです。

分業することが機械化への第一歩になる

分業は生産性を飛躍的に拡大させます。資本家にとってはメリットが大きいものであるし、また未発達な経済では不可欠です。そして同時に、分業が浸透していくことが機械化し、また未発達な経済では不可欠です。そして同時に、分業が浸透していくことが機械化への必須条件です。生産現場で分業が浸透しているからこそ、「マニュファクチュア」から「機械制大工業」へと移り変われるのです。

分業するということは、仕事が細分化されるということです。そのため、ひとりひとりの仕事の内容が単純になっています。単純な仕事はマスターしやすく、労働者の熟練度が増し、生産性が向上します。そして、分業し、仕事が簡素化すれば、その工程を担当する機械もつくりやすくなります。商品をゼロからつくり、完成させる機械は製造できなくても、細分化されたひとつひとつの工程をこなす機械は設計上、つくれるかもしれません。

小麦粉からピザ生地を練って、それを伸ばし、具材をトッピングして、適度な温度で焼く機械はつくれないかもしれませんが、小麦粉からピザ生地を練る機械、伸ばす機械、トッピングする機械、焼く機械だけだったら?そんな機械だったらつくれそうですね。つまり、分業されることにより、技術進歩や機械の発明が促されるのです。そして各部門で機械が次々に発明されていくと、工場の現場は、労働者が主体のマニュファクチュアから「機械制大工業」へと発展するのです。

ただ、その「機械化」は長期的に考えると企業の利益を減らしていきます。利益を増やそうと分業を進め、分業をするからこそ、機械化が進みます。そして、機械化するからこそ、商品の価値が下がり、付加価値を生み出す労働者が減り、結果的に企業の利益が長期的に減っていくのです。「収益を増やす」という目的から出発しているため、ほぼすべての企業に当てはまる必然の法則なのです。

その中でも、企業は何とか利益率を上げようとする

自由競争の社会では、誰もが効率を求めます。その結果として、傾向的に薄利多売ビジネスになっていきます。効率化や機械化によって商品の価値が低下し、また商品ひとつあたりの剰余価値が小さくなっていくのは、資本主義の原則で、大きな「流れ」です。ですが、すべての企業が利益率を減らしているわけではありません。なぜか?それは、一方で利益率を引き上げる要素があるからですこの要素があるうちは、薄利多売ビジネスに陥らず、踏みとどまることができます。これらを使える企業は、「流れ」に逆らって利益を増やすこともできます。では、踏みとどまるための要素とは、一体どんなものでしょうか?ここで利益率を式で表すと、

利益率=利益÷かかった費用

です。これを資本主義の表現に直すと、

利益率=剰余価値/(原材料・機械設備費用+労働者のお給料)

となります。利益率が下がらない・上がるためには、

①分母が減るか(生産コストを下げるか)
②分子が増えるか(剰余価値を上げるか)

のどちらかです。それらの条件があれば利益率は下がらず、薄利多売に陥りません。では、どうすればこの条件が実現するのでしょうか?

①分母を減らす要因

生産コストを下げるには、

・原材料、機械設備費用が安くなる
・労働者のお給料が安くなる
・労働力の価値を強引に下げる

の3通りがあります。それぞれ説明していきましょう。

原材料、機械設備費用が安くなる

技術革新が起こり、モノが安くなったり、不景気で価格が下がったりすると、原材料、機械設備費用が安くなります。また、貿易が活発に行われるようになると、海外製品や海外の原材料も買えるようになります。選択肢が増える分だけ、安く買えるようになります。

労働者のお給料が安くなる

労働者のお給料(=人件費)が安くなれば、それだけ企業の利益が増えることになります。労働者のお給料が下がる要因は、大きく分けてふたつあります。

ひとつは、物価が下がること。物価が下がり、労働者の消費する生活用品が安く買えるようになれば、労働力の価値が下がります。そのため、人件費が安くなります。貿易を通じて、海外で安く生産された商品を買えるようになっても、同じようにお給料が下がります。

もうひとつの要因は、仕事を探している人が増えること。仕事に就きたくても就けない人が増えると、労働者のお給料が下がります。「景気が悪くて失業率が高まったらお給料が下がる」ということだけでなく、人口が爆発的に増えている途上国も同じ状況になります。

景気はいいですが、それ以上に「仕事に就きたい人」がいます。そんな人たちが「安くてもいいから働きます!」と売り込み、企業も「代わりはたくさんいるから」と思えば、労働条件を悪くできるからです。

労働力の価値を強引に下げる

労働力の価値は、「その労働者が明日も同じように働くために必要なコスト」です。つまり、人間らしい生活をし、体力を回復させ、気晴らしをし、扶養家族を養うために必要なお金をお給料として渡しているのです。

日本と発展途上国を比べれば、この「必要コスト」は大きく違います。しかし同じ会社であれば、AさんとBさんの「必要コスト」はそれほど変わりません。つまり、同じような職種であれば、AさんとBさんのお給料は同じになります。ただ、会社側がその労働力の価値を強引に下げることはできます。本当は月給20万円が妥当なのに、「うちは月給15万円」とすることができます。15万円は本来「労働力の価値」以下です。でも、その金額でも働きたい人がいれば、企業は労働力を確保することができます。

人件費を減らしても、この労働者が生み出す成果は変わりません。お給料が減っても、成果は変わらないのです。そしてその差額は、企業にとって剰余価値になります。では次に、もうひとつの要素「分子を増やす要因」です。分子が増えれば、結果的に利益率は上がります。これらの要因があるうちは、「薄利」にならずに済むのです。

②分子(剰余価値)を増やす要因

剰余価値を増やすには、

・労働者を長時間労働させる
・イノベーションを起こし、労働者の生産性を高める

などの策があります。

労働者を長時間労働させる

これはつまり、「絶対的剰余価値」を増やすということです。労働者を同じお給料で今まで以上に働かせば、それだけ生み出される剰余価値が増えます。企業にしてみれば、これが一番「手っ取り早い方法」かもしれません。単に「もっと働け!」と命じるだけで、他に何も変えなくても長時間労働をさせることができます。それを、度を越えて行っているのが「ブラック企業」ですね。

ただし、最近は世の中からの風当たりも強くなっていますので、企業は別の言い方で労働者に伝えています。たとえば、「もっと長く働け!」ではなく、「今月から、これも担当してください」と業務範囲を増やすわけです。これはよくあります。要するに「今まで以上に働きなさい」ということですね。多くの労働者は責任感が強いですから、役割を与えられれば、それが終わるまで仕事をします。企業は「長く働け!」とは言っていません。「これからは、この仕事もやって」と言っているだけです。ですが結局、長く働かせることになっています。

労働者の生産性を高める

労働生産性を上げれば、剰余価値が増えます。中には、労働者に対して過度なプレッシャーをかける企業もありますが、基本的には労働者の負担が少なく剰余価値を生み出すことができます。労働者がほしがる「にんじん」をぶら下げて、長時間労働を引き出す企業もあります。

たとえば、その会社では、労働者ひとり当たり100個、商品を生産していたとしましょう。ここで経営者が「200個生産したら、インセンティブとして5万円払います」という条件を提示します。5万円ほしさに倍の成果を出そうとする労働者は多いのではないでしょうか?しかし企業からしたら、たった5万円で成果を倍にできます。もともとのお給料がたとえば20万円だとすると、お給料を25%引き上げるだけで、利益が倍になるという仕掛けです。

「利益を上げる要素」の賞味期限

資本主義経済の中では、すべての企業の利益率が下がっていく運命にあります。ですが、今挙げた要素があれば、その「運命」に逆らって、利益を増やしていくことができます。ただ、先ほども説明したように、この運命に逆らって利益を増やせるという要素があるために、ほとんどの企業は自分たちが向かっていく先に何が待っているのかを知らずにビジネスをしています。

バケツに水を入れても、最初は何も起こりません。しかしバケツの水位が上がり、限界を超えると、一気に水があふれて、問題が顕在化します。ですが、もうそうなってからでは取り返しがつきません。まさに「覆水盆に返らず」です。原材料・機械設備費用が安くなればいい。労働者のお給料が安くなればいい。労働力の価値を強引に下げればいい。労働者を長時間労働させればいい。イノベーションを起こし、労働者の生産性を高めればいい。

たしかに、それができているうちは、何の問題もなく生産拡大、利益拡大ができます。しかし、これらの要素が永遠に使えるわけではありません。これらの「カンフル剤」がなくなった瞬間、企業の問題が明らかになります。しかし、そのときにはすでに大規模な生産設備を抱え、後戻りができなくなっています。膨大な固定費を抱え、利益がほとんど出せない状態になります。その後には、大規模なリストラをするか、その企業が倒産するしかないのです。

まとめ

1.イノベーションによる生産の効率化が結果的にコモディティ化(均質化)を引き起こす。しかし、資本主義経済では競争は必然であり、止めることはできない。

2.利益を求めて効率化を進めると、分業・機械化が不可欠となる。機械化によるイノベーションは一時的に利益が生まれるが、簡単にコピーされ、やがて当たり前の基準となるため、労働力の価値が低下して長期的に利益は減っていく。

3.利益率を上げるには、ふたつの方法がある。
①「生産コストを下げる」・・・原材料や機械設備を安くする、労働者のお給料を安くする、労働力の価値を強引に下げる。
②「剰余価値を上げる」・・・労働者を長時間働かせる、生産効率を上げる。

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■ここであなたにクイズです!

・私たちが生きている資本主義社会の中では、「利益を求めて効率化を進めることにより、機械化による一時的な利益は生まれるが、その後、労働力の価値が低下して長期的に利益は減っていく」と解説しました。しかし近年、この「ルール」が当てはまらない社会が存在しています。IT(インフォメーションテクノロジー)社会です。そしてそのIT社会の仕組みを上手く活用することで「長期的に利益を伸ばし続けている人達」も存在しています。その人達とは、一体どういう人達だと思いますか?

 

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