BlackRockのトークン化MMF「BUIDL」完全ガイド
いきなり結論(初心者向け)
BUIDLは、ブラックロックが運用する「米ドル建ての短期・安全資産(現金/米国債T-bill/レポ等)」に投資する“マネー・マーケット・ファンド(MMF)”の持分を、ブロックチェーン上のトークンとして発行したものです。1トークン=概ね1米ドルの安定値を目指し、利回り(分配)は日々発生し、一定周期でウォレットへ付与されます。
ただし公開市場の暗号資産みたいに誰でも買える商品ではなく、米国法上の私募枠(Rule 506(c)・3(c)(7))で「適格投資家」向け、最低投資額は公表資料で5百万ドルとされています。そのため結論として、日本の一般個人が“日本から少額で買う”のは原則ほぼ不可能で、買えるのは(例外を除き)大口の機関投資家・富裕層に限られます。
1. BUIDLは何の「トークン」?(仕組みをゼロから)
1-1. まず中身:何に投資して利回りを作る?
公式発表では、ファンド資産は現金、米国債(主に短期国債)、レポ取引で構成され、ここから米ドル短期金利に近い利回りを狙います。また、カストディ/管理はBNY Mellon、トークン化・名義管理はSecuritizeが担う体制が示されています。
1-2. 次に外側:トークンはどう動き、どう増える?
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価格の狙い:1トークン=1米ドル付近の“安定値”を目指す。
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利回りの付き方:日々の利息が積み上がり、月次で「新しいトークン」としてウォレットへ付与される、と説明されています(=枚数が増えるイメージ)。
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送れる相手:24/7で送れるが、送付先は事前承認(ホワイトリスト)の投資家に限る。
2. BUIDLが提供する価値(なぜ“トークン化MMF”が必要?)
BUIDLの価値は一言でいうと、「安全性の高い米ドル短期金利(MMF利回り)」を“オンチェーンで使える資産”に変えることです。従来のMMFは「証券口座で保有→銀行・証券の営業時間に沿って売買→決済」という流れでした。BUIDLはここに、次の“追加機能”を載せます。
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24/7で動く利回り付き担保:担保を週末や夜間にも移転でき、資金効率を上げやすい。
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即時性・透明性:チェーン上で保有と移転が追跡でき、事務処理の自動化と監査がしやすい。
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金融アプリに組み込める(プログラム可能):複数チェーンで展開し、担保・レンディング・決済の部品になれる。
3. どんな社会的需要を満たすのか(具体シーン)
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取引所/OTCの担保ニーズ:BUIDLは、Binanceでオフエクスチェンジ担保として採用され、担保としての実用が進んでいると発表されています。
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“安全な利回り”の待機先:USDC等のステーブルコインは便利でも、利回りが付かない/付けにくいことが多い。BISは、トークン化MMF(TMMF)が「利回りを提供する貯蓄・担保手段」として拡大している、と整理しています。
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国境をまたぐ資金管理:銀行送金の時間・休日制約を避け、チェーン上で保有移転しつつ、裏側は短期国債中心で安全性を取りに行く。
4. 競合商品は何になるのか(カテゴリ別)
BUIDLの競合は「トークン化された米国債/短期金利商品(RWA・トークン化国債)」です。代表例:
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Franklin Templeton(BENJI)
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Ondo Finance(USDY / OUSG)
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Hashnote(USYC)、Superstate(USTB)、OpenEden(TBILL)など
見比べポイントは「①誰が買えるか(一般/非米国/機関)」「②利回りの渡し方」「③償還の速さ(USD/USDC等)」「④対応チェーン」「⑤カストディ/法規制」です。
5. BUIDLを持つことで解消できる問題・メリット(具体)
5-1. 担保効率(“金利ゼロの担保”問題)
取引のためにUSDC等を置くと利回りが薄くなりがちですが、BUIDLなら担保として置きつつ米ドル短期金利を狙える方向性が示されています。
5-2. 決済の摩擦(T+日数、営業時間、事務)
BUIDLは「持分の発行・移転」をチェーンで行い、透明な台帳と即時の移転を狙います。
5-3. マルチチェーンでの利用(“どこでも担保”)
BUIDLはEthereumに加え、Arbitrum/Aptos/Avalanche/Optimism/Polygon/Solana、さらにBNB Chainへ拡大したと発表されています。
6. リスクと注意(初心者が最初に知るべき)
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元本保証ではない:安定値を目指すが、MMF特有の流動性・市場リスクはある。
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相手先制限(ホワイトリスト):自由送金ではなく、承認済みウォレットに制限されるのが一般的。
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手続きが重い:私募ファンドとしてKYC/AMLや書面が必要。購買/償還はSecuritizeでのオンボードと、日次償還ルールに従います。
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ブロックチェーン/カストディの運用リスク:鍵管理、スマートコントラクト、チェーン障害等は追加リスクになります。
7. 日本人が日本からBUIDLを買うには?(現実的な手順)
7-1. 大前提:買える人の条件
公式発表では、BUIDLはRule 506(c)・3(c)(7)に基づく私募で「適格投資家」向け、最低投資額は5百万ドルです。この条件のため、日本の一般個人の「国内取引所で買う」「少額で買う」は想定されていません(取引所上場もしない、と明記)。
7-2. 条件を満たす場合の“具体的ステップ”(省略なし)
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適格性と法規制の確認:あなたが投資家要件を満たすか、また日本居住者として購入可能かを、法務・税務・コンプラで確認(ここが最大の壁)。
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Securitizeに登録:投資家としてオンボーディングを開始。
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本人確認/KYC・AML:身分証、住所、資金源、法人なら登記/代表者情報などを提出し審査。
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ウォレット準備:自己管理(ハード/カストディ)か、機関向けカストディを選ぶ(初期参加者としてカストディ企業名が示されています)。
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ウォレット登録→ホワイトリスト化:承認済みアドレスだけが受領・移転できます。
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サブスクリプション契約に署名:正式書面に同意。
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USDで入金:案内された送金先にUSDを送る→受領後にトークンがミントされウォレットに届く、という流れが説明されています。
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保有中の分配を受け取る:日々の利息が積み上がり、月次でトークンが付与される仕組み。
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償還(換金):日次償還ルールに沿って、トークン送付→バーン→USD(場合によりUSDC)受取、という形が整理されています。
7-3. 一般個人が“目的”だけ満たすなら
BUIDL自体が対象外でも、目的が「米ドル短期金利に近い利回り+オンチェーン利用」なら、購入対象者が異なる競合(USDY等)を比較し、手数料・償還・規制適合性を確認するのが現実的です。
8. よくある質問(超初心者向け)
Q. BUIDLは暗号資産取引所で買えますか?
A. いいえ。公式資料で「取引所に上場しない」旨が明記されています。
Q. なぜ“誰でも買える”形にしないの?
A. BUIDLは私募の証券として提供され、規制遵守のために投資家審査とホワイトリスト運用が必要だからです。
Q. ステーブルコインと何が違う?
A. どちらも1ドル付近の安定値を狙いますが、BISはTMMFを「証券としての規制枠+短期金利のリターンを分配できる」点で整理しています。
9. 重要ポイントだけ超まとめ(行動に直結)
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BUIDLは「米ドル短期国債中心のMMF」×「トークン」で、目的は“オンチェーンで使える利回り付きの現金代替”を作ること。
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強み:24/7移転、マルチチェーン展開、担保採用の拡大。
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弱み/制約:私募・適格投資家向け(最低5百万ドル)なので、一般個人は基本買えない。
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日本からの最短ルート:条件を満たす人だけが、SecuritizeでKYC→契約→USD入金→ウォレット受領、という手順。
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買えるか判断するチェック:①あなたが適格投資家か、②日本居住者として購入が許容されるか、③USD送金/受領口座と税務(源泉・申告)の整理、④鍵管理(自己管理かカストディか)、⑤換金(償還)タイミングと手数料。ここが曖昧なまま進めると、KYCで止まる・送金が差し戻される・税務リスクが残る、の3点が起きやすいので先に潰してください。不明点はSecuritizeや顧問弁護士・税理士に確認するのが安全です。※ここ最重要。!!
