ビットコイン「下落」が続くと言われる原因は何か?マイナーがビットコインより儲かるAIデータセンターにシフトしているのは本当か?
※ここでいう下落は、(A)2025年10月の急落(高値から“ほぼ半値”までの急落)と、(B)2026年2月5日前後の下落(6万ドル台前半までの急落)をまとめて指します。
まず結論(原因は「3層」ある)
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引き金(短期):株式(特にテック/AI)中心のリスクオフ+レバレッジ清算の連鎖+ETF資金流出が同時に起き、売りが売りを呼んだ。
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土台(中期):2024年半減期後の収益悪化で、マイナーが運転停止・売却・資金繰り優先になりやすい環境が続いた(=“下げに弱い地盤”)。
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増幅(テーマ):マイナーのAI/HPCシフトでハッシュレートが目に見えて落ち、「ネットワーク安全性が弱るのでは?」という不安がセンチメントを冷やしやすかった(実害より心理面の影響が大きい)。
1. 何が起きた?(初心者向けに“数字で”整理)
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2026年2月5日、ビットコインは6万ドル台前半まで下落し、ビットコインETFも1日で13%超下げる局面が出ました。
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同時期、米国スポットETFでは資金流出(アウトフロー)が続いたと報じられています(例:2月初旬に大きな流出が観測)。
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さらに、2025年10月の急落でレバレッジが崩れた“傷”が残り、相場は数カ月間不安定になりました。
2. 原因を1つずつ「因果」で分解
① マクロ(株安・金利観測)で“リスク資産”が同時に売られた
ビットコインは「デジタルゴールド」と言われる一方、短期ではテック株と同じ“リスク資産”として売買されやすい局面があります。テック株が崩れると、ポートフォリオ全体のリスクを落とすために暗号資産も売られやすい。
② レバレッジ清算(強制売り)が“雪崩”を作った
先物/無期限先物で証拠金が足りなくなると、取引所がポジションを強制清算します。
価格が下がる → 清算が増える → 売りが出る → もっと下がる、という負のループが暴落の典型パターンです。今回も「レバレッジの巻き戻し」が主要因として指摘されています。
③ ETFの資金流出は“現物売り”につながりやすい
スポットETFは、解約(流出)が増えると運用側が現物BTCを売る(または売る必要が出る)ため、需給を悪化させます。実際、スポットETFの流出拡大が下げ圧力として報じられています。
④ マイナーの採算悪化→売却/停止→需給と心理の両面で下げ要因
マイナーの収益性を表す指標として「ハッシュプライス(hashprice)」があります(ハッシュパワー1単位あたりの期待収益)。
このハッシュプライスが数年ぶりの低水準に沈む局面が続き、採算が悪いと「運転停止」や「保有BTCの売却」で資金を確保しやすくなります。
⑤ AI/HPCシフト→ハッシュレート低下→“安全性不安”が下げを増幅
ポイントはここです。
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ハッシュレートは2025年11月頃から約12%下落し、中国禁令以来級のドローダウンと報じられました。
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その結果、難易度調整(difficulty retarget)はマイナス調整(例:-14%程度)が見込まれ、ブロック時間も伸びやすい、と報じられています。
これがなぜ価格に効くか?ポイントは2つ。
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実務面:ハッシュレートが落ちると一時的に送金確定が遅くなり、手数料が上がりやすい。
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心理面:「セキュリティが弱ったのでは?」という物語が出ると、特に初心者は怖くなって売りやすい。
ただし、ここで誤解しないでほしいのは、ハッシュレートが下がっても難易度は後から調整され、依然として莫大な計算資源が動いています。“即ハック”という話ではなく、不安が価格を冷やす側面が大きいです。
⑥ 「AIの方が儲かる」構造がマイナーの行動を変えた(=あなたの前提の根拠)
近年、電力・用地・変電設備を持つマイナーは、同じインフラをAI/HPC向けデータセンターに転用しやすい。実際に、
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Core ScientificはAI企業との長期契約(HPCインフラ提供)を進め、AI側がマイナー施設を取り込む大型取引も起きています。
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CipherはAWS向けに300MWをAI用途で提供する契約を公表し、AIホスティング契約の累計が約85億ドル規模になったとしています。
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BitfarmsもHPC/AI設備(液冷・GPU対応など)への転換計画を開示しています。
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アナリストは、マイナー各社のAI/HPC転換に「実行リスクがある」として評価を引き下げる動きも出ています。
こうした“より安定して儲かる仕事”が増えると、短期的には「採算の悪いマイニングを止める/縮める」合理性が高まり、ハッシュレート低下→不安材料→価格の戻りが鈍る、という流れが起こりやすいのです。
3. まとめ:暴落は「1つの犯人」ではなく連鎖
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マクロ×レバレッジ×ETFが“今この瞬間の下げ”を作り、
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採算悪化(hashprice低迷)が“下げやすい地盤”を作り、
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AI/HPCシフトでのハッシュレート低下が“心理的な追い打ち”になった。
4. 注意点(初心者が勘違いしやすい3つ)
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「ハッシュレート低下=すぐ危険」ではない:難易度調整がある。危険は“程度問題”で、まずは事実(どのくらい下がったか)を確認する。
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暴落局面はニュースより“清算”が主役:理由探しより、レバレッジの巻き戻しが起きているかを見る。
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AI/HPC転換は万能ではない:契約は魅力でも、電力・冷却・顧客集中などの実行リスクがあり、マイナー株/市場心理を揺らす。
5. もう一段深掘り:あなたの前提(AI/HPC→ハッシュ低下)が“暴落”に繋がる道筋
ここは「途中を省略しない」で、因果を階段にします。
ステップ1:採算が悪化すると、まず“弱いマイナー”から止まる
採算の悪化は、ざっくり言うと
収入(BTC価格×手数料×自分の取り分)−コスト(電気代+設備費+人件費) がマイナスになることです。
この採算の代表指標がハッシュプライスで、低いほど「同じマシンを回しても稼げない」状態です。採算が悪いと、(1)古い機械を止める→(2)電力契約を縮める→(3)借入や設備投資が重い企業ほど資金繰りが先、となりやすい。
ステップ2:そこで“AI/HPCの方が高い単価”が出ると、経営判断が変わる
同じ変電設備・用地・冷却を使って、AI/HPCの長期契約が取れるなら「マイニングより安定収益」と見なされやすい。
実例として、AWS向け300MW・累計85億ドル規模のAI契約を公表した例や、AI企業がマイナー施設を取り込む大型案件が報じられています。
ステップ3:マイニング停止・転用が重なると、ネット全体のハッシュが落ちる
結果として「ネットワーク全体のハッシュレートが下がる」。直近では、数カ月で約12%の下落が報じられています。
ステップ4:ブロックが遅くなり、難易度が下がる(ここがプロトコルの自動調整)
ビットコインは、一定期間ごとに難易度を調整して平均10分に近づけます。ハッシュが急に落ちると調整までの間はブロックが遅れ、次の調整で難易度が下がる(=採算が一部回復する)仕組みです。次回調整は-14%程度の見込み、という報道もあります。
ステップ5:それでも“価格”が先に落ちる理由=市場は調整を待ってくれない
プロトコルは数週間単位で調整しますが、市場は秒で動きます。
「遅い・不安・ニュースが怖い」→レバレッジが外れる→ETF資金が逃げる、の方が速い。だから短期では価格の方が先に崩れます。
6. 初心者でもできる“原因の見分け方”チェックリスト(見る順番まで指定)
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いま何が一番動いた?
ETF(IBIT等)が急落していれば資金フロー要因が濃い。 -
清算が主役か?
急落の同時刻に出来高が跳ね、戻りが弱い=レバレッジ巻き戻しを疑う。 -
マイナー側の地盤は?
ハッシュプライス低迷が続くと“下げに弱い”。 -
ハッシュレートと次の難易度
推定値は難易度エスティメーター等で追える(次回が大幅マイナスなら、採算回復で戻る余地)。 -
AI/HPC転用のニュース
大型契約が増えるほど、短期はハッシュ低下の材料になりやすい(ただし企業の生存にはプラス)。
7. よくある誤解Q&A
Q:ハッシュレートが落ちたら51%攻撃が起きる?
A:攻撃コストは下がりますが、依然として巨額で、短期の下落だけで“即危険”とは言い切れません。市場は危険より不安に反応しがちです。
Q:難易度が下がれば価格も上がる?
A:難易度は“採算”調整で、需要が戻らなければ価格は戻りません。ETFフローとレバレッジ解消が先です。



