ビットコインの価値が0(ゼロ)になるシナリオを考察【シナリオ2. 51%攻撃の成功】

　ここでは、2025年3月23日時点でビットコインに対する51%攻撃の成功確率を0.1%以下と推定し、その具体的な根拠を詳細に解説します。51%攻撃は、マイニングパワーの過半数を制御し、ブロックチェーンを改ざんする可能性がある攻撃であり、ビットコインのセキュリティに対する重大な脅威とされています。しかし、現在のネットワーク状況や経済的要因を考慮すると、その発生確率は極めて低いと結論付けられます。

ハッシュレートの分布

　まず、2025年1月のデータによると、最大のマイニングプールであるFoundry USA Poolは277 EH/sのハッシュレートを有し、総ネットワークハッシュレート約850 EH/sの約32.6%を占めています。2位のAntpoolは146 EH/s（約17.2%）、3位のVia.BTCは120 EH/s（約14.1%）であり、いずれも単独で51%に達していません。

　以下の表は、トップ10マイニングプールのハッシュレート分布を示します：

　総ハッシュレート745 EH/sを基に計算すると、最大のプールでも37.18%（277/745*100）であり、総ハッシュレートを850 EH/sと見積もると32.6%に下がります。これにより、単一のエンティティが51%を制御することは技術的に困難であることが明らかです。

総ネットワークハッシュレート

　2025年3月22日時点の総ネットワークハッシュレートは約854.62 EH/sと報告されています。これにより、51%攻撃には少なくとも435.84 EH/sが必要であり、現在の最大プールのハッシュレート277 EH/sでは足りません。他のプールと連携する必要があり、これは現実的には困難です。

攻撃コスト

　51%攻撃のコストは非常に高く、2025年3月時点で1時間あたり約172万3670ドル（約2億5,739万円）と推定されます。このコストは、ハードウェアと電力の両方に適用され、長期間の攻撃を維持することは経済的に非現実的です。例えば、1日攻撃を続ける場合、約4,144万8800ドル（約61億8,934万円）のコストがかかり、攻撃者がブロック報酬を稼げないことを考慮すると、利益が出る見込みはほぼありません。

経済的インセンティブ

　攻撃の経済的インセンティブは非常に低く、攻撃者はブロック報酬を失い、ビットコインの価値が下落するリスクを負います。専門家の意見では、51%攻撃は「銀行が自分自身を攻撃するようなもの」と表現され、理性的な経済行動としては考えにくいとされています。攻撃者はむしろ正直にマイニングを行い、ブロック報酬を得る方が利益が大きいです。

ネットワークの反応

　51%攻撃が検出された場合、ビットコインコミュニティはフォーク（分岐）によって対応する可能性が高いです。過去の例では、マイニングプールが50%に近づいた場合、自主的にハッシュレートを減らす動きが見られました。このようなコミュニティの迅速な対応は、攻撃の成功確率をさらに低減します。

歴史的先例

　ビットコインの歴史において、成功した51%攻撃は一度も報告されていません。一方で、小規模な暗号通貨では51%攻撃が実際に発生しており、例えばBitcoin SVやBitcoin Goldが過去に被害を受けています。しかし、ビットコインの規模と分散化により、これらのリスクは大幅に低減されています。

専門家の意見

　専門家の意見では、ビットコインに対する51%攻撃の確率は非常に低く、コストとインセンティブの非現実性から「ほぼ不可能」と評価されています。Gavin Andresen（元Bitcoin Foundationの主任科学者）は2012年に、「マイナーは迅速にルールを変更し、51%攻撃を拒否する」と述べています。

確率の推定

　以上の要因を総合的に考慮し、51%攻撃の成功確率を0.1%以下と推定します。これは、単一エンティティが51%のハッシュレートを秘密裏に取得する確率（約1%）、経済的インセンティブの存在（約5%）、攻撃が成功しコミュニティの対応を回避する確率（約1%）を掛け合わせた結果、0.05%程度と見積もられるからです。ただし、これらの数値は推定値であり、実際の確率はさらに低い可能性があります。

結論

　ビットコインに対する51%攻撃の成功確率は2025年3月23日時点で0.1%以下と推定され、これは現在のハッシュレート分布、攻撃コストの高さ、経済的インセンティブの欠如、コミュニティの迅速な対応能力を反映しています。歴史的データと専門家の意見も、この結論を支持しています。