ビットコインの価値が0(ゼロ)になるシナリオを考察【シナリオ10. セキュリティの崩壊】

　ここでは、2025年3月23日時点でビットコインの価値が0になる可能性があるシナリオ10「セキュリティの崩壊」が起こる確率を0.5%以下と推定し、その具体的な根拠を詳細に解説します。シナリオ10は、ビットコインのウォレットや取引所が頻繁にハッキングされ、ユーザーの資産が失われ、結果として市場の信頼が崩壊し、ビットコインの価値が0になる状況を指します。このシナリオが起こるためには、以下の条件が必要です：

・ビットコインのウォレットや取引所が頻繁かつ大規模にハッキングされる。

・これらのハッキングがユーザーの信頼を完全に失わせるほどの影響を与える。

　結果として、ビットコインの価値が急激に下落し、市場から完全に消滅する。

現在の状況と最近のハッキング事件

　2025年3月23日時点で、ビットコインのセキュリティに関する最近の主要な事件として、ByBitという大規模な暗号通貨取引所のハッキングが挙げられます。この事件は2025年2月に発生し、約15億ドルのイーサ（ETH）が盗まれました。このハッキングは、暗号通貨史上最大規模のものであり、北朝鮮のハッキンググループ「Lazarus Group」によるものとされています。

　しかし、この事件はEtherに限定されており、Bitcoin（BTC）自体は直接影響を受けていません。ByBitはBitcoinを含む複数の暗号通貨を取り扱っていますが、今回のハッキングはEtherのコールドウォレットに限定されており、Bitcoinのウォレットや取引所のセキュリティに直接的な影響を与えていないことが確認されています。また、2025年3月23日時点で、Bitcoinのウォレットや取引所に対する直接的なハッキングは報告されていません。

ビットコインのセキュリティの強さ

　ビットコインのセキュリティは、以下の要因によって支えられています：

・分散型ネットワーク：ビットコインは分散型のブロックチェーン技術に基づいており、中央集権的な管理が存在しません。このため、特定のウォレットや取引所がハッキングされたとしても、ネットワーク全体が崩壊する可能性は低いです。ユーザーは、分散型取引所（DEX）やピアツーピア（P2P）取引を通じてビットコインを利用し続けることが可能です。

・暗号技術の強さ：ビットコインのトランザクションは、SHA-256ハッシュ関数とECDSA（楕円曲線デジタル署名アルゴリズム）を使用しており、これらの技術は現在の計算能力では破られる可能性が非常に低いです。量子コンピュータによる脅威は将来的な懸念事項ですが、2025年時点では実用的なレベルに達していません。

・ウォレットのセキュリティ対策：ユーザーは、コールドウォレット（hardware wallet）やマルチシグ（multi-signature）技術を使用することで、資産を安全に保管できます。これらの対策は、取引所のハッキングがユーザーの資産に影響を与えるリスクを大幅に低減します。

過去のハッキング事件と市場の反応

　ビットコインは過去に大規模なハッキング事件を経験していますが、それらを乗り越えて価値を維持してきました。例えば：

・Mt. Goxのハッキング（2014年）：世界最大のビットコイン取引所だったMt. Goxがハッキングされ、85万BTC（当時約4億7500万ドル相当）が盗まれました。しかし、ビットコインの価格はその後回復し、現在では過去最高値を更新しています。

・その他の取引所のハッキング：2024年にはDMM Bitcoinが3億ドル以上の資産を失い、2025年初頭にはByBitが15億ドルのEtherを失いましたが、これらの事件は特定の取引所に限定されており、ビットコイン全体の信頼性に深刻な影響を与えていません。

・これらの事例から、ビットコインの価値は特定の取引所やウォレットのセキュリティに依存しているわけではなく、全体的なネットワークの信頼性と分散型の特性に基づいていることがわかります。

現在の市場状況と信頼性

　2025年3月23日時点で、ビットコインの市場状況は非常に強固です：

・市場支配率：ビットコインの市場支配率は約58.3%から60.23%と推定されており、暗号通貨市場の過半数を占めています。

・時価総額：ビットコインの時価総額は約1.67兆ドルであり、他の暗号通貨を大きく引き離しています。

・採用率：2025年時点で、約6500万人のアメリカ人がビットコインを保有しており、世界的な採用も拡大しています。

・価格の推移：ビットコインの価格は2024年後半から上昇トレンドを続けており、2025年初頭には過去最高値を更新しています。専門家の予測では、2025年末までにビットコインの価格が18万ドルに達する可能性が高いとされています。

　これらのデータは、ビットコインに対する市場の信頼が依然として強いことを示しています。たとえ一部の取引所やウォレットがハッキングされたとしても、全体的な市場の信頼性に深刻な影響を与える可能性は低いです。

将来的なリスクとトレンド

　将来的なリスクとして、以下の点が挙げられます：

・量子コンピューティングの脅威：量子コンピュータがECDSAを破る能力を持つ場合、ビットコインのセキュリティに影響を与える可能性があります。しかし、専門家の予測では、2035年までにその可能性が50%に達する可能性が高いとされています。2025年時点では、このリスクは現実的ではありません。

・規制の強化：暗号通貨に対する規制が強化される場合、取引所のセキュリティ要件が厳格化され、ハッキングのリスクが低減される可能性があります。

・技術的進歩：ビットコインはすでに量子耐性暗号（例：格子暗号、ハッシュベースの署名）の導入を検討しており、将来的な脅威への備えが進んでいます。

　これらの要因を考慮すると、ビットコインのセキュリティが完全に崩壊し、価値が0になる可能性は非常に低いと評価されます。

確率の定量化

　シナリオ10が起こる確率を定量化するため、以下の要素を考慮しました：

　これらの要素を総合すると、全体の確率は0.5%以下となります。具体的には、現在のハッキング頻度が低く、ビットコインの分散型特性と市場の信頼性が高いことを反映しています。

結論

　シナリオ10の発生確率は0.5%以下と推定され、これはビットコインの分散型ネットワーク、強固な暗号技術、市場の信頼性を反映しています。ByBitのハッキングは大きな事件ですが、Bitcoin自体には直接的な影響を与えておらず、過去の事例からもビットコインはハッキング事件を乗り越えて価値を維持してきました。したがって、ウォレットや取引所のハッキングがビットコインの価値を完全に崩壊させる可能性は非常に低いと言えます。