VISAとMastercardの株価急落の原因になったステーブルコインとは?クレジットカード決済とステーブルコイン決済の比較まとめ!
ここでは、ステーブルコインの定義、VISAとMastercardの株価急落との関連性、クレジットカード決済との比較、メリット・デメリット、そして日本およびグローバルでの普及状況と市場規模について、2025年6月23日時点の最新情報を基に詳細に解説していきます。
ステーブルコインの詳細な定義と仕組み
ステーブルコインは、暗号資産の一種で、価値の安定性を保つためにフィアット通貨(例:米ドル)、商品(例:金)、または他の暗号資産にペッグされる設計です。主な目的は、ビットコインやイーサリアムのような価格変動リスクを軽減し、支払いや貯蓄、送金に適した手段を提供することです。
・種類: フィアット担保型(例:USDT、USDC)、商品担保型(例:金に連動)、暗号資産担保型(例:DAI)、アルゴリズム型(供給調整で安定化)があります。
・安定性の確保: フィアット担保型では、発行者が米ドルなどの資産を100%備蓄し、需要に応じて交換可能にする仕組みが一般的です。ただし、過去には十分な準備金がないケース(例:TerraUSDの崩壊)も報告されています。
・用途: 暗号資産取引の流動性確保、クロスボーダー送金、デフィ(分散型金融)での利用が主ですが、最近は実店舗での支払いにも広がりを見せています。
VISAとMastercard株価急落の背景とステーブルコインの影響
2025年6月17日、米国上院はGENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)を68対30で可決しました。この法律は、ステーブルコインの発行者に対して流動性資産(米ドルや短期国債)による裏付けを義務付け、月次で準備金の構成を開示することを求めます。これにより、ステーブルコインの合法性と利用可能性が向上し、大手小売業者(アマゾン、ウォルマート)がステーブルコインを採用する動きが加速しています。
・投資家の懸念: Xの投稿(CryptosR_Us)によると、ステーブルコインは支払いコストを85%削減可能で、VISAやMastercardの取引量減少を招く恐れがあります。これにより、6月13日にはVISA株が5.4%、Mastercard株が4.6%下落しました。
・競争圧力: ステーブルコインの取引量は2024年に27.6兆ドルに達し、VISA(15.48兆ドル)とMastercard(9.757兆ドル)の合計を上回っています。特にクロスボーダー送金やデフィでの利用が拡大しており、伝統的なカードネットワークの収益を圧迫する可能性があります。
・VISAとMastercardの対応: 両社はステーブルコインに適応しようとしており、VISAはVisa Tokenized Asset Platform(VTAP)を通じて銀行がステーブルコインを発行できるように支援(Visa)、MastercardはOKXやCircleと提携し、カードでのステーブルコイン支払いを可能にしています。しかし、市場は短期的にネガティブに反応しています。
クレジットカード決済とステーブルコイン決済の詳細比較
以下に両者の違いを詳細に比較します。
項目
|
クレジットカード決済
|
ステーブルコイン決済
|
---|---|---|
プロセス
|
商人→取得銀行→カードネットワーク→発行銀行→承認
|
ウォレットから直接ブロックチェーン上で送金
|
手数料
|
通常2-3%(商人負担)
|
ブロックチェーン手数料のみ(非常に低コスト)
|
決済速度
|
承認は即時だが、決済完了は数日
|
ほぼ即時(ブロックチェーン上の確認時間による)
|
グローバル性
|
国際取引に為替手数料や追加料金がかかる場合あり
|
為替手数料なしでグローバルに利用可能
|
セキュリティ
|
不正利用保護やチャージバック制度あり
|
取引は不可逆、消費者保護は限定的
|
アクセシビリティ
|
銀行口座とクレジットラインが必要
|
インターネットとウォレットがあれば利用可能
|
補足: クレジットカードは消費者保護が強固で、リワードプログラム(キャッシュバック等)を提供しますが、ステーブルコインは手数料の低さと即時性で中小企業やクロスボーダー取引に有利です。ただし、ステーブルコインは技術的知識が必要で、規制の不確実性が障壁となります。
ステーブルコインのメリットとデメリット(クレジットカード比較)
メリット:
・コスト削減: 商人にとって2-3%の手数料が0.1%程度に下がる可能性。
・即時決済: ブロックチェーン上の即時性でキャッシュフローが改善。
・グローバル利用: 為替手数料なしで国際送金が可能、特に新興市場で有利。
・金融包摂: 銀行口座を持たない人々にもアクセス可能。
・プログラム性: スマートコントラクトで自動化支払い(例:サブスクリプション)を実現。
デメリット:
・規制リスク: 日本ではまだ明確な規制枠組みが整備中。
・消費者保護不足: チャージバックや不正利用保護がなく、詐欺リスクが高い。
・安定性リスク: 一部のステーブルコインがペッグを外れる事例(例:TerraUSD)あり。
・技術的障壁: ウォレットの設定やブロックチェーン理解が必要。
・受け入れ範囲: 現在、クレジットカードに比べ受け入れ店舗が少ない。
日本での普及状況と市場規模
2025年6月時点、日本ではステーブルコインの採用は初期段階です。
・規制: 2023年6月の支払サービス法改正でステーブルコインの規制枠組みが整備されましたが、電子支払手段発行者(EPISP)の登録はまだなく、地元取引所での上場も限定的。
・取引量: 2025年2月の暗号資産スポット取引量は約1.9兆円(USD13.1億ドル)で、ステーブルコインの具体的な取引量は不明ですが、SBI VC TradeがUSDCを取り扱い開始(2025年4月)など、動きが見られます。
・市場規模: 具体的な市場キャップや取引量のデータは不足しており、採用は主に取引や実験段階に留まります。メガバンク(MUFG、SMBC、みずほ)やソニーなどが参入を検討しており、将来的な成長が期待されます。
グローバルでの普及状況と市場規模
グローバルでは、ステーブルコインは急速に普及しています。
・市場キャップ: 2025年6月18日時点で約2.5兆円(USD251.5億ドル)。2024年12月には2兆円を突破し、2025年には4兆円に達する予測も。
・取引量: 2024年の年間取引量は27.6兆ドルで、VISA(15.48兆ドル)とMastercard(9.757兆ドル)の合計を上回りました。2025年も同様のトレンドが続くと見込まれ、特にアジアやアフリカでの小売・プロフェッショナル利用が40%以上の成長。
・採用事例: PayPalのPYUSDやSociété GénéraleのEURCVなど、大手企業が参入。クロスボーダー送金やデフィでの利用が拡大し、伝統的な支払いネットワークを脅かす存在となっています。
まとめ:ステーブルコインの未来と影響
ステーブルコインは、コスト削減と即時性で中小企業や新興市場に革命をもたらす可能性があります。しかし、規制の不確実性や消費者保護の不足は障壁となります。日本ではキャッシュレス決済比率40%達成(2025年目標)の文脈で、ステーブルコインが補完的な役割を果たす可能性がありますが、現時点では取引所での利用が主で、実店舗での採用は限定的です。グローバルでは、Tether(USDT)の市場支配(62.26%)やCircle(USDC)の北米での強さが際立ちますが、透明性の問題(例:Tetherの準備金開示)も議論を呼んでいます。
VISAとMastercardはステーブルコイン対応を進めるものの、長期的な市場シェアの変化は不確定要素が多く、投資家の反応は短期的なものに留まる可能性があります。